◯整理しても整理しきれない雨の椿
◯みんな燃えてしまった手紙に春雷
◯遊女のうた月に刃
◯熟女も遊女もはたらいている寝ていた
◯とんぼうに気持ちを重ねられないたづねてゆく
◯乳房を吸う男を睨む足元のもみじ
◯みかんの山ちいさき山に一人
◯子牛の耳が大きくて嬉しい村の空
◯スポーツをしている女の尻をみて帰る野菊
◯うんこのような男が怒っているかえるかえる
◯爪をきれいにした女黒豆が焚いてある
◯一日泣いていた新妻の足音
◯黙りこくる南瓜を置いてくる
◯みんな生きている迷ったまま
◯乞食の子供は立派に咲く花
◯夕空を袋に入れる子の股ぐらを嗅ぐ犬
◯処女と握手をした火の用心
◯薔薇たつた一人あづけられている

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★2020〜2021年〜自由律

○一椀にラムプをつけてきた
○つめたいかまどを忘れていた
○涙は松の葉の匂い帰ってくる
○百姓が手を洗っていた道がわかれている
○手紙をやぶいたあとの足音
○虫食い豆をはじいていたそのあと
○隣の人がしんだよおばあさんも居ない
○すすきがまっすぐすぎて苦しい
○顔を洗って灯台をみているよい一日
○みんなが泣いてしまった庭の雑草が伸びていた
○のこらず手紙を焼いて月がキレイだ
○将来より春の土
○すべてをわすれてしまった電車に乗っている
○ああなんという雪が一椀

★2021〜

○鬼雪つめたからう
○掘っても掘っても雪の色
○鼠の食い扶持を考える節分
○柊雪の中声を掛ける
○鬼は外きうにさみしくなった
○鬼は外福は内都と同じやうに
○雪は胸の色とけて鬼は外
○まんまる月のかまくらに座る
○鬼は外恋をしている
○福は内を持ちきれない
○溶け残る雪だるまに鬼のあと
○鬼は外海に消えてゆく
○寝起きに鬼がいたのだろう外は雪
○雪の音にドキリとした恋のはじまり
○透明な雪を白い譜面に書く
○透明なことば譜面の雪
○少なき豆に福は内
○海神さまが山がこわいといった夜
○触れないといふ美学に花のなか
○みんな石がすきころころころと
○黒いかげ鎌倉は春の海
○石垣つむ人々屍残るは月のみ
○ねむの花ひとりこの世の音
○五月雨あけ濃くなって涙だった
○短い夏に海にいきたいと言った混雑
○舟ゆれているなんリットル
○神のアイスクリームのような雨傘
○ひまわりを搾るように坐る仏様
○蜜蜂は雨を多く詠んでいるけふは休み
○朝顔ともだちのつるを上りかなしく泣いた
○水のつめたさともかく太もものあたたかさだれ?(笑)
-エムブロ-