★2019自由律 ★2020

自由律もヤらないと★2019自由律



○まあるい月がはじまる
○濡れた橋を歩いている
○島の灯火に腰を下ろす犬がいってしまった
○好きという前の悪口と好きというまえの一日
○好きという前の悪口やまが荒れている
○寺の前の朝陽に虫が歩き出した
○若葉に埋もれていた月明かりの夜になに咲く
○町すぎて大河赤黒き自分ついてくる
○豚がたくさん金屏風を直す人に合った
○ふるさとの雪あたたかい
○錆びた鈴帽子をかぶる
○豚と牛がたくさんの音楽学校幹をなでる猿が見ている
○海老の殻が美しい陽が落ちる
○カフェにあかつき穴を埋める
○ねむい冬の朝の石橋がこの道
○窓を開けると海近所の人の芋畑に足あと
○乳房がゆれている青い風
○ぜんぶもっていかれた葱畠
○大きく口をあけた猫の髭が長く切れている
○河骨だけがのこっている
○悲しい夕空に船岸の男の子
○歴史に名を刻み沈む日輪
○病気が申し出ている
○嫁が君と呼ばれている君よ犬が寝ている
○片目のひともいるし口切れたひともいる
○犬が見ているので脇にそれた
○耳が聞こえないという人の手が荒れていた
○猫がたくさん寝ていたので違う道を帰る
○焼きいもを買う女の人の後ろ姿
○曲がった釘と蜜柑が落ちていた不思議な日
○居るかという声が風
○花の中で寝ている昔の人自分も時代も捨てていた
○沈丁花の道案内まだ遠く
○沈丁花の好きな人の乳房あたる
○あした死んでもなにも変わらない我が身
○飛行機雲をつかまえてといふ子
○口の聞けぬ人が合うたびにくれたチョコレート菓子
○清流が見えている流れのはやさ
○人が灰になったので灰終りかと云いたいがやめた
○知らない女のテクニックそうでもない
○勉強をしなくても月が出た
○名月にうまいまんじゅうをくふ
○風がめくれてくるので逃げる
○洗ったくつが汚い
○バイオテクノロジーの洗剤靴ひも結ぶ
○そうでもない自分が風の中
○星を打つような犬の尾をみる
○きのふよってきた猫がつれない
○毎年春くれた机に女の子
○悲しいほどに空の月
◯悲しくて児をつれ春の潮
○悲しくて夜明けが早い
○愛犬がじつとこちらを見ている夏の夜

2020〜

◯はたらけば人生がみじかい
◯充実して庭に新しい月が出ている
◯てふてふ君の声もうすぐ会える
◯声があふれてくるので一度胸にしまふ
◯犬に吠えられ順番を待つ
◯ひとり帰る一日
◯ひとりニコニコした一日
◯野菜の食いかたがわからない遠い山
◯刈った草に客となる身
◯刈った草に客となる日
◯コオロギの野菜畑のオペラ座
◯夕げにあふれてくる
◯夕げにあふれてくる静かに
◯夕げにあふれてくる咲いている
◯夕げにあふれてくる島の子
◯夕げにあふれてくる電車の音
◯夕げにあふれてくる鳴る胸を叱る
◯少年の悪魔よ蒲団をかぶる
◯いま思えば遠くの山友かなしき
◯東京タワーを見る労働者に月明かり
◯夜明けを待つひと猫が寝ている
◯誰も居ない船着場押されている
◯春の水に機嫌のよい黒眼鏡
◯嘘ついて春の海そむけたり
◯木の香り赤々と陽が昇る
◯なにもない両手に大海
◯下宿屋の猫に居候のわたし
◯国をおもい茶をのむがはたらけない
◯春の風白砂にたはむれて星空
◯春の風木の家がひろびろ
◯だまってさみしい
◯青田に合う犬と自画自賛
◯今しがた帰ると言って二月
◯さえぎるものがないのもさみしい
◯山犬吠える飽きるまで泣いていっぱいになる
◯北にむかい南にむかい人ごみの中
◯北から南に月落ち花咲く
◯烏瓜旅人たべるものなく星空いっそう光りゆく
○毒づいて雪ふわふわ
○毒づいて足を洗つている
○毒づいて焼いた餅膨らむ
◯電車だけがうごく五輪のとし
◯ひとり咳する人や箸とる
◯つばめが来たので種をもらいにいく
◯つばめよあのころもあおぞら
◯我が儘をいい風の中
◯大松をみる病のなかのこれから
◯世界のひとが死んだ肺の中
◯尖塔の青空ゆくばかり
◯物語の統一と祝福の晩餐のかげ
◯手をあげて東京に子供のこえ
◯般若心経肩の荷がおりた
◯唱えかけの般若心経肩の荷がおりた
◯わたしの青春物語たづねても青空
◯虫をころすのをやめた彼女の詩
◯星をたべるため鳥となり天の川
◯イイカモーどうしたんだらうあのひと

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