家庭教師ヒットマンREBORN!で『台詞二つでショートショート』なお題バトンH
小説(ショートショート)用の、ちょっと特殊なお題バトンです。
文中のどこでも構わないので
「ごめんね、悪気や悪意は無かったんだよ?」
「ついでに遠慮も容赦もな。」
を入れてショートショートを創作して下さい。ジャンルは問いません。口調等の細部は変えても構いません。
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骸と白蘭にあの桔梗とザクロが知り合いだと分かると、とうとうこの学校でも魔手が伸び始めてきたのである。
それは当然、一緒にいる綱吉にも及ぶわけで。
「ひぃー!」
頭を抱えてしゃがみこむと、綱吉を襲ってきた不良に骸と白蘭からのダブルキックを前後から食らい、崩れ落ちた。
「ごごご、ごめんなさい!」
「えー? ツナ君悪くないよー?」
「謝らないでください。綱吉は悪くないですから」
目の前の敗者は邪魔だ。蹴って転がす。
尻餅をついている綱吉の前に跪いて頭を撫でた。
それより、大丈夫だろうか。
怪我はないだろうか。
身体全体を確認する。
「骸クンの変態っ」
「怪我がないから調べているだけですよ」
大丈夫そうですね、と骸がぽんっと肩を叩く。安堵から笑みが溢れる。
「しかし、白蘭のせいですよ。ちゃんと桔梗の面倒を見なかったから…僕まで不良扱いです」
「ごめんね。悪気や悪意は無かったんだよ?」
「嘘おっしゃい。遠慮も容赦もなく人を巻き込んだでしょう」
「えー? でも、思いっきりやってたじゃん! そりゃもう清々しい顔で」
今度は白蘭と骸が互いを掴みあう。
そんな放課後が、幾日も過ぎていって…――。
***
「おい、白蘭、六道。沢田知らんか?」
「はい?」
授業が始まる数分前。音楽の教科担任の指示通り、そちらに向かった旨を伝えると教師は眉をしかめた。
「それが来てないんだ」
どうしたんだろうか。
一応、来ているかもしれないと教師は職員室に戻っていった。
「なぁんか嫌な感じ」
白蘭が頭の後ろに手を組んで椅子に寄り掛かる。
「君のせいですよ」
「僕ばっかり。正当防衛訴えてたの骸クンのくせにぃー」
暫し沈黙して。
「僕は外を含めて一階から探してきます」
「僕、屋上行ってくる」
白蘭が軽い足取りで教室を出て行く。そして、自分は下るため階段へ。
階段のそばに背を預けている男子生徒がいる。腕を組んで明らかに誰か待ち。
骸を見て、表情を変えた。
「綱吉は何処ですか」
「あいつならコッチだ」
やはり捕まっていたのか。
沸き上がる苛立ちを抑え…――るのは辛そうだ。
どこぉ、と階段を降り始めた生徒を壁へ叩きつけ、背中を蹴飛ばして階段から突き落とす。
ゴロゴロ転がって落ちていく彼が止まった所で、階段の上から更に飛び降りて生徒をに着地する。
呻いた所で傍らに膝をつき頭を持ち上げて床へ叩きつける。
がき、と固いものが折れた音だ。すかさず間接技へ持ち込む。
「何処ですか? 綱吉君は何処ですか?」
いだだだ、と悲鳴をあげるので言えば解放するといって更に締め上げる。
やはり、癖で君が付く。
白蘭みたいで嫌なのだが、ふとした瞬間に『君』をつけてしまう。
「わかった! わかったから離してくれ!!」
「そのような無駄口を叩けるんですからまだイケますね。なかなか骨のある方だ」
更にキメてやると、ようやく体育館裏だと白状した。遅いんですよと頭を蹴飛ばす。
それを放置するはずもなく、更にズルズル引きずりながら階段を登って手摺から膝裏で手摺に引っ掛かるようにぶら下げてやる。
「主犯は? 何人ですか?」
「ま、待て! 落ちるっ! 落ちるーっ!!」
「大丈夫です。僕が押さえてますし、膝裏というのはとても便利なフック代わりになるんですよ。鉄棒したことがあるでしょう。そんな感じです。ですが、言わないようなら時間が惜しいので『行きます』」
両手をパッと離すと、ごめんなさいと謝りながら首謀者の名前に人数を教えてもらった。
流石に落ちては死にかねないので(まぁ死んでも良いとは思ったが)階段の手摺から下ろして体育館裏へ向かう。
その途中、白蘭の携帯へ繋げる。
『もっしー? 骸クン。綱吉クン見つけたー?』
「いいえ。場所が分かりました。体育館裏です。首謀者は3年生の糸崎とその仲間5名。計6人です」
『うっわぁ…僕メチャクチャ反対側じゃん? 今、視聴覚室なんだけど』
何故そこにいる。
白蘭がいるのは屋上とは正反対だ。屋上へ行くなら音楽室から出て左に進み一番近くの階段を2回上がったら直ぐだ。
「来なくても大丈夫ですよ」
『待って待って! 今、飛んでいくから1人で片付けな…――』
ぷつりと切る。
視聴覚室から体育館裏ならば本来、10分掛かるだろうが白蘭ならその半分か。
間違いなく骸より先に到着するだろう。
白蘭は、とことん『規格外』なのだから。
あの生徒から奪った携帯の『メール』の送信履歴を漁り、彼の糸崎のやり取り時の口調を覚える。
やりました、とメールすれば、手はず通りに校舎裏に連れてこいと、やはり何か策を張り巡らせていたのであろうと推測出来るメールが返って来た。
体育館裏までの最短距離…――『体育館を通る』。わざわざ外靴を履いて体育館裏に行くなど手間だ。大方、建物の影に身を潜めて強襲する気だったのだろう。
ならば、大体これで相手方に意表をつける。
その作戦は無駄に終わらせる。いやしかし、簡単に見抜かれるような作戦は作戦ではないか。
そんなのは『無駄』というものである。