螺旋状に突っ走って死にたいプロフィール
2014/4/26 Sat 19:49
10分構想(第6回)


話題:自作小説

「箱男」

小さな小さな国があった。そこは独裁者が踏ん反り返って、国民を虐げて私腹を肥やしていた。

そこに一人の男がやってきた。その男は四角い箱を持っていた。

誰もが中身を聞いたが、男は答えなかった。

ある日、独裁者が男と男の話を耳にした。

強欲な独裁者はぜひともその箱の中身が知りたかった。

男は独裁者の前に呼び出された。

独裁者はこう言った。
「その中身はなんだ」

男は答えない。


強欲で忍耐力のない独裁者は無理矢理中身を見てやろう思い側近に命じて男は押さえつけさせた。
男は何も言わない。

そして独裁者が箱を手にして開けようとした瞬間のことだった。


独裁者は物すごい力で身体を捩切られていた。

男を押さえつけた独裁者の側近も同じように転がっていた。


そして男はこの国の王になった。男の力を目の当たりにした者達は男の力に恐怖して誰も逆らうことはできなかった。


男はまず、独裁者が貯めていた財宝を調べ、それを国民のために使った。

男は福祉のシステムを構築し、治安維持をするためのシステムを構築し、国民が飢えないシステムを構築した。
男は私腹を肥やさず、国を見事に作り替えた。

国民は男を神様だと思った。誰もが男を信頼し、尊敬した。

ある日、男は彼の側近にこう伝えた。

「私はこの国を出なければならない」

側近は驚いて男を引き止めた。男は「しかたがないことなのだ」とだけ言った。

男はそれから毎日、国民一人一人と会い話をして、一人一人の適性を判断した。
国民全てに役割を与えた。そして自分に代わる王を選び、様々な政策を伝えた。
そして、男はあの時のあの箱をどこからか持ち出してきた。誰もがその箱の存在を忘れていた。

男は言う。
「この箱には神様が入っている。これを決して開けてはならない。開ければ国が滅ぶだろう。開けなければ、この国は安泰だ。」

そして男は忽然と消えた。


月日が流れた。

どのくらい経っただろう。


一つの国が滅んだ。
その国では「箱を神様と崇める」宗教があったらしい。


あの男は何物なのか、箱の中身は何なのか、箱を開けたから国は滅びたのか。

それは誰にもわからない。




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