妻とホテルに行った


何年ぶりだろう



以前は
目的があって 朝には現地に着いていたい時などに よく利用していた


当日ホテル予約サイトも利用してみたけれど

同等の値段で 部屋も ベッドも お風呂も
たいてい大きくゆったりとして 快適なのはラブホだった



まぁ 中にはおよそ「快適」とは縁がない所もあるのだけれど

本来の目的が 朝市やら 走行会やらと他にあるので
まぁ 後々笑い話として思い出になっている




今回のホテル行きは
そうした目的旅行ではなく ただの気分転換だった



数日前から
SEXのタイミングが合わず お互いにもやもやが溜まり

いっそ久しぶりに行こう

となった訳だ



食事を済ませ
チェーン展開しているホテルへ


緑色のランプを確認して 車を駐車場に滑り込ませた


エントランスに入ると
先客のカップルが どぎまぎしてこっちを見ると
そそくさとエレベーターに消えていった



おっさんが来ちゃ悪いか…

とは思わないが


鉢合わせたモノは仕方ない
知らんぷり
平日とは言え部屋の残りは1つ 選択肢は無かった

チェックインボタンを押した時
エントランスに若い女性が入ってきた

部屋のパネルと僕に一瞥をくれると
戸惑いながら佇んでいた

「お待ちになりますか?」

受付の小さな窓越しに 中の人が女性に声をかける

あとから 遅れて来た男性が何やら受付の人に話かける



僕は ウェルカムドリンクを貰いに移動し その場を離れた





ドリンクを貰い エレベーターに乗ろうとしたら
妻が受付の所に 入浴剤が在るのを見つけ

「取ってきて」

と上目使いにお願いする


こんな時だけ 甘えて猫なで声になるんだから


ドリンクを妻に持たせ 入浴剤のコーナーに向かうと
一足早く 先の女性が選び始めた


待っていよう


そう思ったのだけれど
気配に気づいた その女性は

「すみません」

と僕に譲ってくれようとした


「お先にどうぞ」

僕はそう言って 少し離れて待つ
そのうち 気に入った物をチョイスして 女性は僕に会釈して立ち去った


なかなかどうして
堂々としている



僕が選び始めると 妻が横に来て

「これがいい」

と さっさと自分でチョイスした



度胸比べなら 妻の負けだな



そんな事を思いながら エレベーターに向かう途中に 例の女性の隣に来た男性と目が合った

不思議と楽しそうな女性とは対照的に ひどく緊張して見えた


もしかして 女性の方がラブホ慣…


いやいや
見ず知らずのカップルの事 これ以上の詮索は 野暮でしょう