「今度の監視役は、シカマル?」
無邪気に尋ねてくるその姿に、声も無く肯定する。
「そっかー。同年代の奴が監視役って初めてかも」
見慣れた暗部服に身を包み、見慣れた刺青を腕に灯し、見慣れぬ仮面を付けている。仮面から覗くのは、見慣れた金髪。
聞き慣れた口癖を排した、聞き慣れた声。
「……強かったんだな」
話を聞いた段階では、到底信じる事が出来なかった。資料を読んでも半信半疑だった。
けれども、こうして暗部服を纏い、音も無く敵を消し去る様を目の当たりにし、流石に信じざるを得なかった。
「だってほら」
暗部面を外し、見慣れた顔を晒しながら。
「力がなきゃ生きてこれなかったし」
あっけらかんと、何でも無い事の様に言う。
「……九尾、か」
「理解が早くて助かるってば」
ニッコリと笑いながら、何時もの口調で言われる。聞き慣れた口癖なのに、今は違和感しか無い。
何時もとは違う、感情の窺えない、純粋さしか感じ取れない言葉の、その裏の真意を読み解く事が出来ない。
「そんなに、信用ねぇかよ」
口から出たのは、思慮無き言葉。らしくない失態に舌打ちをしつつ、出てしまった言葉は取り消せないのだからと、任務を受けてからずっと思っていた事を言葉にする。
「お前が人柱力だろうと暗部に属してようと、そんなんで俺達が引くとでも思ったのかよ」
踏み躙られたと思ったのは、思い出か、それとも信頼か。
若干の苛立ちを滲ませながら言えば、ナルトは青い瞳を何度か瞬かせ。
「なぁ、シカマル」
ふわり、と。
それは殺気と呼べる程綺麗ではなく、色香と呼べる程生易しくもなく。
血煙すら匂い立つ様な毒々しい笑みを浮かべ。
「お前は一体、俺に何を望んでいるの?」
思わず息を呑んだ。
背筋に悪寒が走るよりも早く、臓物が締め付けられる。心臓を、直接撫ぜられた気がした。
「俺は先に里に戻るから、シカマルも気を付けて帰りなよ」
まるで何事もなかったかの様に。
あっさりとナルトはそう言い軽く手を振ったかと思えば、次の瞬間にはそこには闇しかなかった。
飛雷神の術かと頭の片隅で思いながら、強張った指先を解き、ようやっと息を吐く。
(面倒臭ぇ……)
それは与えられた任務に関してか、それとも今更ながらに知った悪友の真実か。
何時もの口癖をもう一度呟き、空に浮かぶ月を見上げた。
++++++
シカマルはスレてなくてあくまで普通の中忍で、でもその頭脳を買われて火影でも根でもない上層部グループに「ちょっとお願い」と秘密裏の任務を頼まれて、その内容が「九尾の監視」で……
的な不穏で殺伐としたシカスレナルが読みたいです^^
「なんでお前の監視役が俺なんだ。俺はただの中忍だっつーの」
「俺がお前の事結構気に入ってるからじゃね?」
「は?」
「あれ?俺、アカデミーの頃からシカマルの事気に入ってたんだけど、気付いてなかった?お前相手なら油断するとでも思ったんじゃねーの?」
「はっ…」
「バッカだよなー。気に入ってようが何だろうが、殺されそうになったら先に殺すだけだってのに。シカマルだってそうだろ?」
「……」
みたいな互いに警戒し合ってるような探り合ってるような、でも見方によっては信頼し合ってるような、そんな殺伐ラブって素敵だと思います。
なのに私が書くとなんでラブが鳴りをひそめ、殺伐しか出てこないんだろう……
ラブ何処に行った
今週のアニナル、小さいナルトさんが大変可愛らしくてニマニマしたのですが、皆から詰問され信じてもらえない姿に胸が痛みました;;