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「…」
「…」
「…あの、流川くん」
「何スか」
「わたし、一緒に行った方が良いの?」
「…映画、嫌い?」
「…好きだけど…」
映画館の入り口。
流川は迷う事無くチケット売り場へと向かうが、紫絵は依然ぽかんとしたままだった。
流川が母校である湘北高校へ練習をしに行くとの情報があったため、紫絵は安西先生に挨拶もかねて取材へ向かった。
彼が帰国してから既に何度か取材を行ったためか、流川は紫絵の顔を覚えていたのだ。
『紫絵さん、練習終わったらちょっといいスか』
しかしながら、名前を覚えていたとは驚きだった。
しかも、下の名前で。
言われるがまま、練習後に流川を待った。
が、連れて来られたのは映画館で。
「映画は好きなんだけど、わたし一応…仕事中だし…」
「…写真、撮ったんスよね?」
「え?う、うん」
「一緒に観てくれたら、取材受ける」
「へっ…?」
「何も無しで、帰れるんスか?」
紫絵が何も言えずに居ると、こっち、と言って紫絵を促した。
取材をしたいなら、一緒に映画を見ろと言うことらしい。
紫絵には、流川のしたいことが到底理解することが出来なかった。
こうして取材と称して、これから連れ回されることになるのだった。