●はじまりはじまり
※呼ばれたS5人は我が家の時系列的にだいぶ後
シキ「ここどこ!!!?!??!?!?」
スバル「アルカディアという世界の、アイオリスという街……らしいな」
スズト「すっっっげぇ世界樹でっか!! タルシスと比べてめちゃくちゃ近くにあるんだな!!」
シキ「えっ!? 俺今回自覚ないんですけど!!? また何かやっちゃいました!?」アセアセ
スヴェン「お前以外に誰がいる!! 毎回毎回ソフィアと俺を巻き込みやがって……!!」ガルルルル
スズト「なんか今までと雰囲気めっちゃ違うなぁ! 鎧ピッカピカだし!」
ソフィア「確かにタルシスやアーモロードと比べると、空気のにおいも違う。こんなの嗅いだこと無いかも」スンスン
スバル「……、本当に自覚が無いのか?」ズイ
シキ「ざ、残念ながらマジですよォ!!」
スヴェン「本当だろうなぁ……?」ガルル
シキ「ヒィ〜ッ褐色肌のお二方に挟まれる!! 顔がいい! 顔がいい!!」
スバル「っ、思ってもない事を……」
スヴェン「てッ、適当に褒めて責任を逃れようとするな!!」
シキ「うわーんこれも本心なのにー!!」
スズト「あっ! そういや俺の枕元に手紙があったんだよな! 見せんの忘れてた!」ガサガサ
スヴェン「は!?」
スバル「おいィ?」
シキ「ちょ、ちょっと見せてもらってもいいですか!?」
『そういえばお前等この世界樹の踏破はまだみたいだな?
せっかくだから連れて来てやったぞ 感謝しろ
調整はこっちでしてやるから好きなだけ苦しむといい
1日でも早く元の世界に帰りたいならな。 ナオ』
スズト「ナオの手紙がさ」
シキ「ハァーーーーーッ!!!? ナオあいつクッソマジでもう!!!ホントもうアイツッッッ!!こういう事する〜〜〜〜〜!!!!」(自分の頭ワシャワシャ)
スバル「じゃあ……本当にシキの仕業ではなかった事になるな」
スヴェン「本を正せば一緒な気もするが」
スバル「そこを責めたら酷だろ」
スヴェン「そうかぁ〜……?」
ソフィア「じゃあ……何をするにしろ、私達はこの世界樹を登らなければいけない」
スズト「ま、結局やる事はいつもと一緒だな! タルシスに戻る為にも頑張ろうぜ!」
スヴェン「はぁ〜……、お前の切り替えの速さが羨ましい」
スズト「迷宮に潜る事自体は嫌いじゃねーしな! 今も結構わくわくしてる!」ワクワク
ソフィア「私も。どんな景色が見られるのか、怖さよりも楽しみが強いかも」ワクワク
スヴェン「……まぁ、わからなくはないけど……、やるしかないよなぁ……ハァ」
スバル「…………、シキ、俺達は世界樹を登る決心がついたが?」
シキ「ん゙ぬ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……」(頭ワシャワシャ)
シキ「……、もし会ったら1発殴ろ」スン
スヴェン「……1発でいいのか?」
シキ「じゃあ俺とスヴェンさんで1発ずつ殴りましょうね!!! とりあえずギルド申請しましょう!! もう!!」ズカズカ
スズト「いつも通りミッディ・ティーでいいのか?」スタスタ
ソフィア「私達はそれで構わない、けどもし新しい名前を考える時は皆で一緒に考えましょ!」テクテク
スズト「あったり前だろ〜!」スタスタ
スバル「……」
スヴェン「……」
スバル「で、実際は?」
スヴェン「……当然だろ」
「「帰りてえ〜〜〜〜〜…………」」
●最初のミッションのやつ
シキ「はえぇ〜 巨大な木の根っこってこれですかね〜」
スバル「だろうな」
スヴェン「俺が伐ろう」
シキ「略すと巨根になりますね」
スヴェン「でぁッ」ズルッ(滑落)
スバル「今だけ黙ってろ」
!!◆初死亡はなんか書いとこうと思って……
狙っている敵は複数だった。その全てを引きつけている事を、再認識しなくてはいけなかった。
視界外、真上からの風船落としを頭にもろに食らったスズトは地に崩れ落ち、動かない。
モモンガが着弾したその時に、首が可動域を越えて折れ曲がっていた気もした。
盲目に陥りながらも鋭いその嗅覚で獲物の匂いを嗅ぎ付けて、マッドドッグが食らい付く。
名前通りの凶悪な牙が、倒れ伏した仲間の骨を噛み砕いたその音を聞いた瞬間の、引き攣った悲鳴、絶叫のような怒号。
それも世界樹の迷宮(ここ)では、ありふれたもの。
●おみみ
スヴェン「耳が無いんだが!!!?」(自分の側頭部ペチペチ)
スバル「落ち着け、あるから。耳あるから」
ソフィア「そっか……セリアンって種族は耳が上にあるのね、不思議な感じ……」(自分の耳モフモフ)
シキ「あ〜、後天的だしそんな気持ちにもなるでしょうね。俺はなった事無いですけど」
スヴェン「お前もいつか人間じゃないやつになれ」
シキ「急に呪われてる」
スズト「スバルも伸びたよな! こう……ンみゃっ、て!」
スバル「みゃ? ああ耳か、確かにな……少し慣れない」
スヴェン「元々の俺も耳は尖ってるが、そこまでじゃなかったな」
ソフィア「そうね。ルナリアの特徴なのかしら」
スバル「みたいだな」
スズト「寝る時邪魔になりそうだな〜、大丈夫か?」
スバル「わからん……まだこの体で寝た事無いから……」
シキ「こういう種族って大体お耳が性感帯のひとつだったりしますよね? どうなんです?」モニモニ
スバル「なーーーんも感じないが」スン…
シキ「え〜そうなんですか? つまんないなぁ〜」モニモニ
スバル「あと人の耳を勝手に触るな」ボッ(ファイアボール)
シキ「ゥォアチアチアチ!!」
スズト「……ソフィアとスヴェンは耳敏感だったりするのか?(心配)」
スヴェン「……、あ、後で部屋で確かめておく……」
ソフィア「そ、そうね……たぶん大丈夫だと思うんだけど……」
◆スバルに刀を持たせたいという欲求を諦められなかった
アイオリスに降り立って、最初のミッションを達成して、翌日。
今日は迷宮の探索を休み、メンバーの大半が冒険者ギルドへと赴いていた。
この地でも正式に冒険者となった自分達に転職が許されたからだ。
此処へ来て最初に受けた適正試験の下に薦められた職業では、どうにも納まりが悪かったらしいシキとスヴェンが転職を考えてくる、と。
……かくいう自分も、転職を考える大半の内の1人ではあった。
どうにもこうにも魔術、マギと言ったものは、自分の肌には合わないらしい。
ルナリアの身体になった影響で何とか感覚任せに出せているような技量では、後々はとてもやっていけないだろう。
どうしたものか……。
スヴェンにきっともう要らないから、と売りに行くのを任された刀を片手に持ちながら、大市を目指して人混みの中をゆっくりと歩く。
まだ歩き慣れない道の数々を、一番大きな建物を目印に気の向くままに歩いて、長い長い寄り道を繰り返しながら。
久々の新しい景色を1人で見る感覚。少しだけそわそわと落ち着かないのは、昔の記憶が呼び覚まされているのか、それとも。
やがて、異変に気が付いた。
上り下りが入り混じっていた人の波が、ほぼ一方向だけになっている。
そして、遠くに僅かに聞こえる人々の悲鳴にも。
自然と歩くスピードを速め、人の波に逆らい掻き分けながら、異変の発生源へと向かっていく。
「そっちに行ったぞ!」
「絶対に路地に逃がすな!!」
辿り着けばそこは街の出入り口。
普段は居る筈の無い第1階層の魔物たちが跋扈して、人々を襲おうと暴れ回っている。
逃げ惑う人達と魔物達が乱雑に入り混じるその混乱の中で一部の冒険者達が魔物を食い止め、一般人を避難させているようだった。
加勢するべきかどうか迷っているほんの少しの内に、駆け出せば届くようなすぐそこで、セリアンの子供が派手に転ぶ。
すぐ後ろにはローパーが巨大な鉤爪を持つそのツタを振り上げて。
マギを撃つ?マトモに制御できない自分がこの雑踏の中で?
無理だ。一体どうすれば。
持ってる刀が目についた。
スズトなら、フジなら、皆なら。
迷いの途中で、飛び出した。
左手の指で鯉口を持ち上げ、姿勢を低くして子供とローパーの間に滑り込む。
「らァアア゙ッ!!」
右手でしっかりと柄を握り込み、扇のように刀を大きく振り抜いた。
直前までシキによって丁寧に手入れされていたその刀は、ほんの僅かな抵抗だけを残しながら、ローパーの鉤爪を根本から斬り落とす。
「今だ逃げろっ!!!」
振り返り目を合わせての呼号に賢いその子供はすぐさま起き上がり、脱兎の如く逃げていく。
一番の武器を失ったローパーが大きく揺れて身を捩る。
今度は刀を両手でしっかりと握り本体の斜め上から袈裟切りを滑り込ませると、ローパーはそのまま切り開かれ、潰れて動かなくなった。
「ありがとう、助かったよ」
魔物を食い止めていた冒険者の1人が駆け寄って礼を告げ、返事をする間も無くまた素早く2人で周囲を見やる。
人の波こそは少しだけマシになっているものの、まだまだ魔物は減っていない。
「手伝おう。第1階層の魔物程度なら力になれる筈だ」
鞘を無くさぬよう上着のベルトに通して刀を握り直しながら、そう告げる。
一瞬だけ驚いたようにこちらを見やるが、すぐに頷いて。
「わかった。でもキミはまだ刀に不慣れみたいだから、路地の入口だけを担当してほしい」
「ああ、了解した」
直ぐ近くの路地の入口に背を向けて、刀の切っ先を目線の先まで持ち上げる。
思い返す。
束ねた青い髪が揺れる背中を。
隣で燃えるように光る赤い瞳を。
ふたつが混ざって、紫になって。俺の心に溶けていく。
聞きかじりでしかなかった筈の心得とその刀は、妙に手に馴染んでいる気がした。
(ホントは助けたセリアンの子供からオレンジのガーベラを貰うのとか書きたかった)
●転職直後の話
スヴェン「まさかスバルまで転職して帰って来るとはな」
スバル「意外だったか?」
スヴェン「割とな。マギが使えないってのも意外だった」
スズト「一応他の職業の適正とか調べたんだろ? スバルならなんでもできそうなイメージあったけどなー」
スバル「何でもはできない。できる事だけだ」
シキ「これから覚える事いっぱいですね〜、まぁ地道に行きましょっか」
ソフィア「意外と言えば、シキがリーパーやめちゃったのも意外かも?」
シキ「そうですか? まぁ全く知らない世界なので、最低限のお薬の知識ぐらいは欲しくってですね……」(薬草図鑑パラパラ)
スズト「図鑑でっか! あのちっちゃい奴らが持ってるからデカいと思ってたんだけどやっぱ図鑑自体でっかいな!」
ソフィア「あっ、じゃあ今度私にも見せて! お花とか結構好きだから、知らないのがあったら見てみたい!」
スズト「あ! 俺も俺も!」
シキ「お2人は転職してないから多少暇になりそうですもんね、いいですよ!」
ソフィア「やったぁ!」
スヴェン「……、俺達は実戦で磨いていくしかないんだよな」
スバル「……今からでもハーバリストになるか?」
スヴェン「い、嫌だ、もう本はこりごりだ!」(頭ワシャワシャ)
スバル「だろうな。一般層向けの植物図鑑でも今度探すといい」
シキ「そんな事しなくてもソフィアさんは一緒に居てくれるでしょうに〜」
スヴェン「う、うるさいぞッ!」カアッ
ソフィア「そ、そうだけどぉ……」テレッ
スズト「そういや最初に職業適性のテスト受けた時の話ってしたっけ?」
シキ「してませんね? スズトさんはやっぱフェンサーが一番だったんですか?」
スズト「んや、適正自体はマスラオとハウンドの方が高かった! やっぱ持った事ある武器だったからだろうな〜」
ソフィア「でも身体がアースランだったからフェンサーにならざるを得なかったのかしら」
スズト「そゆこと! ちなみにフェンサーは3番目だった!」
スヴェン「最初のミッションを達成しないと転職できないって、こう、なんか、面倒だな……」
スバル「無駄に選択肢を与えても混乱させるだけだろ。面倒だが正解だ」
シキ「まぁ確かに。俺はやっぱリーパー適正が一番高かったですね〜」
ソフィア「他はどうだったの?」
シキ「どうだったかなぁ……今やってるハーバリストが2位で他がなんか大体同じ数値でめっっっちゃ低かったのだけは覚えてるんですけど……」
ソフィア「そ、そう……。私は見れば判るけど、ハウンドが一番適性が高かった」
スズト「ソフィアも元々は弓使ってるんだもんな!」
ソフィア「それもそうだったんだけど、狼さんとの相性が良かったらしいんだって」
スズト「本当に最近始めたのかわかんないぐらい息ピッタリだもんな!」
スヴェン「まぁイクサビトのムラサメとも仲が良いからな」
ソフィア「そ、そこ一緒にしていいの?」
スヴェン「……あ〜、撤回しとくか。ムラサメの為にも」
シキ「じゃあ他の職業の適正はあんまり無かった感じで?」
ソフィア「……う、うん。実はそう。シャーマンとフェンサーが少し高くて、他は同じくらいだった」
スバル「ま、秀でてるのがひとつある時点で十分だろう」
スズト「そうそう!」
シキ「なんも無いよりは断然良いですもんね」
ソフィア「スヴェンはフェンサーが一番高かったのよね?」
スヴェン「ああ、マスラオよりもフェンサーとセスタスの方が高かった。だから今はセスタスだ」
スズト「考えるより体が先に動く方だもんな、俺とおんなじで!」
スヴェン「フェンサーが2人居るよりはこっちの方が役割が分かれていいだろ?」
スズト「へへっ、俺が頑張って引きつけてる間に殴んの任せたからな!」拳コツン
スヴェン「任せろ。ソフィアは勿論、お前にも指一本触れさせない内に敵全部ぶっ飛ばしてやるよ」コツン
シキ「(う〜ん生傷絶えなさそう、早くハーブの調合覚えないと……)」(薬草図鑑パラパラ)
スズト「スバルはマスラオになったけどさ、やっぱそれが一番適性高かったのか?」
スバル「……いや、適正自体は実は全部低い点数だった。ハウンドとネクロマンサーが僅かに高かったぐらいか」
シキ「えっ、意外ですね、ていうか、すみません……」
スバル「いや、いい。ハウンドも弓の扱い自体は問題なかったんだが……」
スズト「だが?」
スバル「鷹に耳をひたすら啄まれた」
シキ「な、ンハッハwwwww装飾光ってますもんねwww」
スヴェン「あ〜……元の俺より耳長いもんな、今のスバル……」
スバル「痛かった……」
スヴェン「だろうな……」
●頼むよお
スバル「俺が前列に行くようになったんだから鎌じゃなくて杖をだな」
シキ「ヤダッ!」鎌ギュッ
スバル「鎌じゃなくて杖の方が…」
シキ「ヤダーッ!」
スバル「杖を」
シキ「ヤーッ!!」
スヴェン「ヤーーーーーー!!!!!!!」ドゴォ!!!(ボディブロー)
シキ「グアアーーーーーッ!!」
スバル「あーもうめちゃくちゃだよ」
●そういや決めてねえなって
ソフィア「そろそろ狼さん(猟犬)の名前を決めようかと思って…」
スヴェン「ムラサメ…はちょっとなぁ」
シキ「ハチはどうでしょ? 名犬ですよ!」
スズト「グラエナにしようぜ!!」
ソフィア「う〜ん……スバルは何か案、ある?」
スバル「聖犬伝説……」
シキ「ひょっとして眠いですね?」
(リスペクト:時計さんの世界樹X実況)
(ちなみに時計さんの実況内での鷹の名前は「たかし」です 草)
●このパターンなりがち
シキ「起きてくださいッ!!(簡易蘇生)」ドゴッ!!(胸部殴打)
ソフィア「ぇ゙ふッ!!!(蘇生)」
スヴェン「ソッ!? シ…ソッ……????!」
スバル「(ソフィアがシキに殴られた事と蘇生してもらった事がせめぎ合い混乱している)」
◆金髪2人の力量差
事の始まりは、アーモロードだった。
職業は違えど遠距離での攻撃を主とした自分達が、敵に間合いを詰められた際のトレーニングは必要じゃないかと、スヴェンが。
スバルもそれに同意して、いつしか2人は迷宮探索の無い日には肉体のみを用いた模擬戦を行うようになっていた。
スズトとソフィア、そしてシキの3人は身内相手にはすっかり遠慮をしてしまうので、程よくドライな2人はこの訓練を続けるには相性がとても良かった。
そして此処、アイオリスで再会したその時にも、根付いていた習慣は続いて。
「そらッ!!」
首を狙って繰り出される鋭い手刀を、スヴェンは身体を逸らしてかわしてゆく。
お返しにと真っすぐに飛んできた拳を手の平で受け止めた際に腕にびりびりと痺れるような痛みが走って、スバルは僅かに顔を顰めた。
以前と違うその感覚に気が付いたのはスバルだけではなかったようで。
掴まれかけた拳を振り払って自由を取り戻したのち、スヴェンも何かを確かめるように拳を握り直す。
「なぁ、スバル」
スヴェンが言葉を続ける前に、遮るようにスバルのフックが飛んで来る。
それをあえて先程されたのと同じように掴んで止めて、スバルが自分のようには振り払えないのを解った後に。
僅かに目を細めたスヴェンが、得意げに舌なめずりをした。
その反応に怒気を纏ったスバルのもう片方の拳が突き出される。が、それもスヴェンの手に受け止められて。
両手を握り込まれ自由を奪われたスバルの身体が徐々に反り、スヴェンの力に押し負けていく。
踏ん張る為に力が込められた踵がずず、と後方にずり下がる。
「今のスバルは……ッ随分と非力みたいじゃないか。なぁ……?」
力で勝つ事の出来ないまま遂に膝をついたスバルの顔に、本人の物ではない金の毛先が触れて、頬を撫でる。
完全にスバルを抑え込む事に初めて成功した、スヴェンの瞳が異様にぎらついて。
「今まで力で決して勝てなかった、お前にッ……! 力で勝てるって……ハァッ、ははははッ! いい気分だなァ……!!」
僅かに屈辱を孕んだ視線を受けている事に気が付いて。
それがどうにもこうにも愉快で仕方がなくなって、スヴェンは、嗤った。
刹那、スバルの瞳が怒りに満ちて見開かれる。
「なめるなァッ!!!」
地に付いていたスバルの片膝が突き出して、スヴェンの鳩尾に突き刺さった。
息を詰まらせ固まったスヴェンの身体が両手と突き刺さった膝から掛けられる力でグンと持ち上げられて、スバルの頭の向こうへと投げられる。
鈍い音がして、スヴェンが顔から地面に着地した。
「ぁ、えぁっ……? な、なにが起こった……??」
「……い゙ッ……、うぐうぅぅぅぅっ……!」
数秒して、明滅した視界から解放されたスヴェンが未だ眩暈を残したまま、ゆるゆると起き上がる。
スバルはその隣で横倒しになり背骨を押さえて呻いていた。柔らかくもない身体で弓なりになりスヴェンを投げた影響で。
涙目の2人がそのまま各々苦しむ所に、物音を聞きつけたシキがばたばたと駆け付ける。
「え、えっ、何があったんですか!? 大丈夫です!?」
シキは今の自分達にはまだ貴重なメディカを差し出しながら、おろおろと2人の間を右往左往している。
スバルはそのメディカを断って、シキの手を借りてゆるゆると立ち上がった。
「いや……近距離の訓練をしていたんだが、お互いまだこの身体に慣れてなくてな……」
「もう訓練してたんです? いい心がけですけどあんまり怪我しないでくださいよねぇ〜……」
スバルがしっかりと地に足を付けたのを確認したシキが、続けてスヴェンに肩を貸して立ち上がらせる。
治まって来た眩暈の向こうに見えるスバルを見つめるスヴェンの目は、いつも通りに戻っていた。
(スバル「“ 女 の 俺 ”にも勝てなかったのがそんなに悔しかったのか?」(Vの舞台では女の子の身体だった)
スヴェン「ぐぬぬ」(Vでは魔法職だったのでSTRが低かった))