続き〈



被害者の会社では蜂の巣をつついたような騒ぎだった


昨日までよき同僚だったユリコが殺されていたのだから


まだ犯人の行方も知らない、となれば当然だろう


美山刑事、女刑事が会社に訪れ、関係者に精力的に当たっていた


どうも職場恋愛をしていたようだが

相手は四国に転勤になったばかりらしい


美山刑事は密かに唇を噛んだ


最後の一人に聴取を終えてから

この会社の社長に会った
社長はユリコの父親位の年齢だったが


今度の事件に相当なショックを受けたようだ

彼の目はまだ血走っている


自社の社員とは言え、そんなにも


おかしいな


美山は、アリバイをただした
社長にアリバイはない



社長の長沢は精根尽きていた


頭はユリコのことでいっぱいだった


己のしたことを信じられなかった


箱根の別荘でユリコに会った時、ある人と結婚したいと打ち明けられた


驚愕した

ユリコを会社で働かせているものの、遊んでいるような部署である


生活には何不自由させていないと、満足していた


ユリコの相手は自分との深い仲も知らず、
自分の末端の部下でもある



その若者は一週間後、四国に追い払った


ユリコは泣き叫んでいたが取り合わなかった


取り合わないどころか、


私はユリコを責め苛みながら殺したのだ


妻は何も知らない


私は妻を捨てることさえ、しなかった

子供達は成人しているが、深く傷つき、
誰も私を許さないだろう


ここまで回想して


長沢は静かに車を出した



自然と、ユリコとよくドライブした湘南の海へと車は向かう


長沢は、人気のないのをみすまして

海に、車ごと沈んで行った


たった独りで



美山刑事が、浜に駆けつけたのは

翌日の午後だった



      了