2024-2-18 01:14
02/17 | 銀色の熱情
無理もない。生贄になってまで守りたかった村がなくなってしまったのだ。今の感情がどうであれ、複雑なのは確かだろう。
私としては、いっそ邪神のフリでもして滅ぼしてやろうかくらいに思っていたので、いっそすがすがしさすらあるのだが、ラピスの気持ちを考えると素直には喜べない。
「シチュー、冬限定らしいよ」
「それは貴重だな」
ほどなくして運ばれてきたシチューをふたりで食べる。
きっと本当は美味しいのだろうが、まるで砂を噛んでいるような感覚があった。
「これ、砂が入ってる……」
「お客様、すみません! 砂抜きが済んでいない貝を間違えて調理してしまいまして……! こちら新しい料理とお詫びの品です!」
どうやら本当に入っていたらしい。
「もー。クォルツ、なんでもくもくと食べてるんだよ。普通砂が入っていたら気づくだろ」
「錯覚かと……」
「錯覚て。ふふっ……。まあ、でもサービスで肉と宿泊割引券まで貰えて、かえってラッキーだったね」
確かにそうだな。
お前の笑顔が作ったものではなくなったから。
ちょうどまだ宿を決めていなかったので、お腹を充分に満たしたあと頂いた割引券が使えるという宿へ向かった。
元がとても高かったらどうしようかと考えていたが、割引券を使えば残金でも泊まれるくらいの価格だった。
「高そうな宿。夏ならすんごいのかも……」
「安い時期に泊まることができてよかったな」
大きめなベッドがふたつ。部屋も広い。更に、防音魔法がスイッチでオンオフできるようになっている。オフを押すと外から波の音が聴こえてくる仕様だ。
「観光地だから、防音、しっかりしてそう」
「観光地……が、関係あるのか?」
「いや。それは、フツー……盛り上がるんじゃない? 色々と」
言葉だけでは意味に気付けなかったが、ラピスが視線をベッドへ向けたことで理解した。
さすがに、これは、私が鈍すぎたな……。
「はー。なんか、疲れた」
ラピスがそのままゴロリとベッドへ横になる。
「今日はゆっくり休んだほうがいい」
「ん。ここ座って」
不服そうな表情で私をベッドへと呼んだ。
言われるがまま腰かけると、こちらへ擦り寄ってきて頬を擦り寄せたあと、頭を膝に乗せてきた。
甘えてるのか? 可愛いな。
優しく髪を撫でてやると、幸せそうに目を細めた。
「少しは元気が出たか?」
「うん。っていうか、やっぱりバレてたか。いつも鈍いのに、こういうとこだけ鋭いんだから」
溜息をつきながら、私の膝へ顔をグリグリと押しつける。
私としては、いっそ邪神のフリでもして滅ぼしてやろうかくらいに思っていたので、いっそすがすがしさすらあるのだが、ラピスの気持ちを考えると素直には喜べない。
「シチュー、冬限定らしいよ」
「それは貴重だな」
ほどなくして運ばれてきたシチューをふたりで食べる。
きっと本当は美味しいのだろうが、まるで砂を噛んでいるような感覚があった。
「これ、砂が入ってる……」
「お客様、すみません! 砂抜きが済んでいない貝を間違えて調理してしまいまして……! こちら新しい料理とお詫びの品です!」
どうやら本当に入っていたらしい。
「もー。クォルツ、なんでもくもくと食べてるんだよ。普通砂が入っていたら気づくだろ」
「錯覚かと……」
「錯覚て。ふふっ……。まあ、でもサービスで肉と宿泊割引券まで貰えて、かえってラッキーだったね」
確かにそうだな。
お前の笑顔が作ったものではなくなったから。
ちょうどまだ宿を決めていなかったので、お腹を充分に満たしたあと頂いた割引券が使えるという宿へ向かった。
元がとても高かったらどうしようかと考えていたが、割引券を使えば残金でも泊まれるくらいの価格だった。
「高そうな宿。夏ならすんごいのかも……」
「安い時期に泊まることができてよかったな」
大きめなベッドがふたつ。部屋も広い。更に、防音魔法がスイッチでオンオフできるようになっている。オフを押すと外から波の音が聴こえてくる仕様だ。
「観光地だから、防音、しっかりしてそう」
「観光地……が、関係あるのか?」
「いや。それは、フツー……盛り上がるんじゃない? 色々と」
言葉だけでは意味に気付けなかったが、ラピスが視線をベッドへ向けたことで理解した。
さすがに、これは、私が鈍すぎたな……。
「はー。なんか、疲れた」
ラピスがそのままゴロリとベッドへ横になる。
「今日はゆっくり休んだほうがいい」
「ん。ここ座って」
不服そうな表情で私をベッドへと呼んだ。
言われるがまま腰かけると、こちらへ擦り寄ってきて頬を擦り寄せたあと、頭を膝に乗せてきた。
甘えてるのか? 可愛いな。
優しく髪を撫でてやると、幸せそうに目を細めた。
「少しは元気が出たか?」
「うん。っていうか、やっぱりバレてたか。いつも鈍いのに、こういうとこだけ鋭いんだから」
溜息をつきながら、私の膝へ顔をグリグリと押しつける。
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