※まだウォロさんは出てきていません※
目が覚めたら、そこは牢屋だった。
「は!? ……えっ!?」
ガバッ、と身を起こして、自分の両手にグルグルと縄が巻き付けられているのを見て、呆然とした。
だって、自分は。ほんのついさっきまで、黒曜の原野でポケモン調査をしていて――。
「あれ……いや、ちがう……」
そうだ、たしか。
オヤブンカビゴンに見つかって、あっちこっちと逃げているうちに、森の奥地の暗がりにいつの間にか飛び込んでいたのだ。
そうしたら、ひと気のないはずのそのあたりから、人の叫び声のようなものを聞いたのだった。
※「生まれ変わりのモノローグ」のシロナさんと会う&その後の告白シーンです。
ポケマスさんのイベントのがあまりに衝撃だったので掲載します※
【前の話: / / 】
(いろいろあってテルウォロの二人が同居中{まだ恋愛に発展してない}状態)
●口調などはポケマスさんのテルくんの年上に対する口調を参考にしてます●
「テル、ちょっと頼みたいことがあるんだ」
「ん? なに?」
学校の放課後。帰り支度を整えていた自分の教室に、コウキがひょこっと顔を出してきた。
「これ……ナナカマド先生のとこに、出してきてくれないかな」
「え? 別にいいけど……どうしたんだよ」
「今日、歯医者だったのすっかり忘れてて。悪いけど、よろしく!」
「わかった。気をつけろよ」
と、相槌を聞くか聞かないかの時点で、コウキは風のように飛び出して行った。よほど時間がギリギリと見える。
わたわたと慌てふためきつつわめけば、背後の子どもはキョトンと首をかしげた後、
「あ。……もしかして、クスリ効いてきたのか」
と、納得したように頷いた。
「っ……いえ、その」
「わ、すごい。ウォロさん顔まっ赤だよ」
ぺた、と頬に小さな手のひらがあてられる。羞恥でカッと全身が火照った。
「さっ……さわらないでください」
「いつもひょうひょうとしてるウォロさんが、こんなあわあわしてるのって新鮮だなぁ」
ニコニコと笑顔を浮かべた少年は、こちらの懇願をまるっと無視してぎゅう、と抱きしめる力を強めた。
(現代転生・学生パラレル)
「新入生? ……いえ、その顔は……」
金色の髪が、サラリと揺れる。
生物室の入口から姿を現した彼――ウォロは、ナナカマドを見た後、こっちに視線を向けて固まった。
ポカン、と驚きの表情に彩られた彼の表情を見つめると、ウォロは一回、二回、大きく瞬きをくりかえした後――ズイっとコウキに顔を近づけた。
「あ! そうだそれ、入れっぱなしだった……!」
と、テルはさもしまった! と言わんばかりの表情ののち、照れくさそうに頬をかいた。
「もらい物なんだよ。なんでも、惚れ薬とかって」
「ほ……惚れ薬?」
ついさっきも耳にした単語に、小包を手のひらに置いたまま固まった。
※アルパニ時空の、体の関係はあれどもできてない二人です※
「……眠れない?」
「そうなんだよなぁ」
すっかり日も暮れた屋外のテントの中。ゴロン、と寝袋の上に横になったテルに、ウォロは思わずうろんなまなざしを向けた。
「知りませんでしたよ。そんな繊細さを持ち合わせているとは」
「ひっど……ウォロさん、おれのこと、超人とでも思ってるわけ?」
「オヤブンポケモンに何度ひん死にさせられても復活する人間を、他にどう思えと?」
「肉体の強さと、メンタルは別物なんだって!」
ガバッ、と上半身を起き上がらせ、テルは大げさに両手をふり乱して力説する。
「テルさん、別れましょう」
「……ハ?」
「実は、他に好きな人ができまして」
「……ハ?」
「あなたのことを好きと思えなくなってしまったんです。別れましょう」
「…………ハ??」
ウォロの言葉に、テルは氷像さながらに硬直している。
想定内の反応なのか、ウォロはふぁさっと自らの前髪を払った。
※にわか雨、のつづきのお話です※
(現代転生・学生パラレル)
「…………」
「…………」
気まずい。互いの間に落ちる沈黙に、う、と身を縮こまらせた。
場所は、図書館の奥まったホコリっぽいテーブル。他に誰の姿もないことを確認して、向かい合って座っている、という状態だ。
相対する彼、ウォロは、無言のまま先ほど本棚から抜き出した本をペラペラとめくっている。まるで、こちらのことなど眼中にない、と言わんばかりに。
※4/14(金)にチャレンジした60分勝負を推敲したものです。
(先輩テルくん×ウォロさん)
推敲前のアーカイブはこちら→txtlive.net
「このまま船が沈んだら……おれたち、難破者として捜索されるのかな……」
「沈んだ後に捜索されても……という感じですが」
「そりゃあ、死んだら意味ないけど……っうわっ、塩水、口に入った!?」
「これだけの嵐です。サッサと口を閉じ……っ、ク、ッ」
眼前にザバッと大きな白波がたって、とっさに目を腕で覆う。カチャン、と音を立てた手錠のせいで防ぎきることはできず、髪も顔も、しとどに海水で濡らされる。
「ウォロってあの子のこと、けっこう好きだよね」
「……はい?」
売上金の清算のために赴いた、イチョウ商会の本部テント。
その長であるギンナンは、顔を突き合わせたこちらに対して、なんてことない口調で言ってのけた。
「え、っ……え、ええ! なにせ、上得意様ですからね!」
ほんの一瞬、引きつった表情をさとられないように、上ずった明るい声でそうごまかした。
あの、テルという少年。時空の裂け目から落ちてきたという子ども。
彼は自分の思う通りに、ヒスイの地を駆けずり回っている。
各地のキング、クイーンを鎮め、異常だった空を直し、今はプレート集めに勤しんでいるはずだ。
いずれ神へ至るための、駒のひとつ。ただそれだけの存在でしかない。