4月のにーさんの日
2010-4-23 08:02
ニールとライル
「よ!ライル」
「相変わらずというか久しぶりというか、まあ、元気そうなんで何よりだ」
「何だ、読書中か?…ん、その本は…」
「知ってんのか?」
「…あぁ、ずっと前に読んだなって。外国の作者のだろ」
「そ。まあ兄さんは何でもかんでも読んでるからな、驚きはしないけど」
「゛この次にはまことのみんなの幸のために私のからだをお使いください゛、だっけな?」
「ああよく覚えてるな」
「はっはは、何と無くな」
「でも…まことのみんなの幸…。俺は蠍にはなれないよ」
「俺もだよ、ライル。口でいうほど簡単じゃない」
「一人の人間の力なんて矮小さ。己を守ることでも精一杯だ。それなのに他の誰かの為に生きようとあがく」
「どうした?随分考え込んでるじゃないか」
「みんなの、…なんてでっかいことは言えないけどな、少なくとも俺はアンタの幸のためにならこの体を使ってもいいぜ。アンタがそうしたようにな」
「それは駄目だ」
「理不尽だな。蠍になれない?たしかにアンタにはあれない。みんなの幸いの中に俺…、俺達は含まれなかった」
「駄目だライル」
「それに、ニール。双子だって空にいられるんだぜ?」
「それ以上言うな。ここが壊れるぜ?」
「……。……まあ、幸とまでは言わないけどさ、もとよりここはアンタが唐突、かつ理不尽なまでに決めたルールの元あるんだ。何でも欲しいもの、して欲しいこといってくれないか?兄さんは初めっから何も求めちゃいないじゃないか」
「んーそうでもないけどなぁ…。…んじゃ、わがまま言うけど、…その本を俺にくれないか?」
「これを?…いいけど、読んだ事あるんだろ?」
「一度読んだ事あるからって持ってちゃいけないなんて決まりはないぜ?」
「確かにそうだけどな」
「それに置いて来たんだ」
「ふーん。まあ、いいや。あ、カバー邪魔だから外してたんだ。ちょっと待っとけ」
「ああ、構わないよ。俺もカバー外すタイプなんでね。さすが双子」
「そうかい。んじゃホラ」
「サンキュ」
「しかし、同じ本ならせめても新しいのくれとは言えないのか?」
「ライルが読み癖付けたのが欲しいんだよ」
「…やめてくれ、寒い。それに読み癖付くほど読んでないよ」
「お前昔から本なんて殆ど読まなかったもんなー」
「るせ」
「さて。本を貰ったんだ。ライルにはこれを」
「バラ?」
「そ。今日はそういう日でもあるそうだ」
「本に…バラの日か?」
「そ。男性は女性に赤いバラを。女性は男性に本を贈る日。サン・ジョルディ。でもまあ、そんなに世界認識な行事でもないけどな」
「ちょっとまてそれじゃあ俺は」
「やー、バラだけでも渡しておこうかと思ったらライル本くれるし、と、いうわけでこの本ありがとな!あ、今度は手紙書くよ。折角の万年筆使いたいし、それじゃこれにて退散!」
「おいコラ!」
・参照図書『銀/河/鉄/道の/夜』(著:宮/沢/賢/治)
・サン・ジョルディの日については『ウ/ィキ/ペ/ディア』参照
「相変わらずというか久しぶりというか、まあ、元気そうなんで何よりだ」
「何だ、読書中か?…ん、その本は…」
「知ってんのか?」
「…あぁ、ずっと前に読んだなって。外国の作者のだろ」
「そ。まあ兄さんは何でもかんでも読んでるからな、驚きはしないけど」
「゛この次にはまことのみんなの幸のために私のからだをお使いください゛、だっけな?」
「ああよく覚えてるな」
「はっはは、何と無くな」
「でも…まことのみんなの幸…。俺は蠍にはなれないよ」
「俺もだよ、ライル。口でいうほど簡単じゃない」
「一人の人間の力なんて矮小さ。己を守ることでも精一杯だ。それなのに他の誰かの為に生きようとあがく」
「どうした?随分考え込んでるじゃないか」
「みんなの、…なんてでっかいことは言えないけどな、少なくとも俺はアンタの幸のためにならこの体を使ってもいいぜ。アンタがそうしたようにな」
「それは駄目だ」
「理不尽だな。蠍になれない?たしかにアンタにはあれない。みんなの幸いの中に俺…、俺達は含まれなかった」
「駄目だライル」
「それに、ニール。双子だって空にいられるんだぜ?」
「それ以上言うな。ここが壊れるぜ?」
「……。……まあ、幸とまでは言わないけどさ、もとよりここはアンタが唐突、かつ理不尽なまでに決めたルールの元あるんだ。何でも欲しいもの、して欲しいこといってくれないか?兄さんは初めっから何も求めちゃいないじゃないか」
「んーそうでもないけどなぁ…。…んじゃ、わがまま言うけど、…その本を俺にくれないか?」
「これを?…いいけど、読んだ事あるんだろ?」
「一度読んだ事あるからって持ってちゃいけないなんて決まりはないぜ?」
「確かにそうだけどな」
「それに置いて来たんだ」
「ふーん。まあ、いいや。あ、カバー邪魔だから外してたんだ。ちょっと待っとけ」
「ああ、構わないよ。俺もカバー外すタイプなんでね。さすが双子」
「そうかい。んじゃホラ」
「サンキュ」
「しかし、同じ本ならせめても新しいのくれとは言えないのか?」
「ライルが読み癖付けたのが欲しいんだよ」
「…やめてくれ、寒い。それに読み癖付くほど読んでないよ」
「お前昔から本なんて殆ど読まなかったもんなー」
「るせ」
「さて。本を貰ったんだ。ライルにはこれを」
「バラ?」
「そ。今日はそういう日でもあるそうだ」
「本に…バラの日か?」
「そ。男性は女性に赤いバラを。女性は男性に本を贈る日。サン・ジョルディ。でもまあ、そんなに世界認識な行事でもないけどな」
「ちょっとまてそれじゃあ俺は」
「やー、バラだけでも渡しておこうかと思ったらライル本くれるし、と、いうわけでこの本ありがとな!あ、今度は手紙書くよ。折角の万年筆使いたいし、それじゃこれにて退散!」
「おいコラ!」
・参照図書『銀/河/鉄/道の/夜』(著:宮/沢/賢/治)
・サン・ジョルディの日については『ウ/ィキ/ペ/ディア』参照