2011-1-31 07:41
「つなっつな…ッ」
「落ち着いて幸村。…でも確かに、そういう物…欲しいかもしれない」
「…!」
「幸村が強いのは知ってるけど、相手が弱いわけじゃないのも知ってる、から」
どこか寂しげに口にする宮野に幸村は何も言えない。そしてふ、と気が付いた。
「………。…、そういえば何故…黎凪を戦に連れていく気が無いと分かったのだろう…?」
「顔で、じゃない…?」
「か、顔?!……その、黎凪。…別に、来たいのならば、来ても構わん」
「!」
そう言えば宮野は驚いたように幸村を見た。
「…ただ…黎凪を戦場に連れて行ったら、お前がいなくなりそうで怖いのだ」
「…へ…?」
「……谷沢殿に言われたのだ」
――やりたいようにやらせていると、いつか犠牲になる、と。
そう口にすれば、宮野は驚いたように目をぱちくりさせている。
「……俺もそうなると思った」
「…。そっか」
「ただ単にそれは俺が弱いだけの事なのだろうが…」
そう言って苦笑する。宮野はしばらくじっ、と幸村を見ていたが、ややあって口を開いた。
「…私が戦場にいたら、それだけ幸村の気が逸れちゃうって事か」
「!そ、それは…っ」
「…分かったよ。出来るだけ戦場には行かない」
宮野は気まずそうな表情を浮かべる幸村を見て、にこりと笑った。
「幸村の事信じて待ってる」
「…ッ」
あまりに綺麗な笑みで言われたものだから、幸村はつい赤面してしまった。
「わー!リアルに二人が惚気てるー!」
「なっ!の、惚気じゃないしっ!」
「ねーねー、こんなんどうよ?」
人の話を聞いているのかいないのか、谷沢が一つのネックレスを差し出した。
長さは幸村が六文銭を下げている紐と同じくらいだ。中央にカプセルのような形をした飾りが一つついているだけの、シンプルなものだ。
「…、あれ?これピルケース?」
「いやいやいやいや、開かないから!どうです、真田さん」
「そ、某?…某、こういった事はよく分からんのでござる」
「なるほど。…黎凪は?」
「…、紐の所丈夫そうだし、いいんじゃないかな…?」
「はいじゃあ決定!すいませーんこれ2つくださーい」
そのまま買うことが決定してしまい、会計を済ませた谷沢が二人にそれを渡した。
「値段いくら?」
「いいのいいの。私達からのプレゼント!ほら、つけてみてよ」
「…う。…つけようか幸村…」
「てか真田さん。絶対その紐よりこっちのが丈夫だと思うから、六文銭もこっちに下げたらどうすっか?」
「そうでござろうか?…、分かったでござる」
幸村は六文銭を下げている紐を外すと、六文銭を外した。チャリン、と小銭特有の音がたつ。金具を外して貰ったネックレスに小銭を通し、再び首にさげようとした、のだが。
「…止め方が分からぬ…」
「あ、私つけてあげようか」
「!すまぬ」
宮野は幸村の手からネックレスを受け取り、少し背伸びをしながらそれを手早く止めた。
「はい、ついたよ」
「かたじけない」
「…身長差ってやっぱいいなぁ…」
「?」
幸村は村越の言葉を不思議に思いながらも、そのネックレスを見下ろした。
真ん中のカプセルは小銭の穴よりも小さかった。だから今までと、六文銭のさがり具合はさして変わらない。六文銭の間からキラリと光るそれを見た後、宮野をちらと見た。
宮野も幸村と同じようにネックレスを見ていた。その表情はどこか嬉しげだ。
「………」
「?ど、どうしたの幸村?」
「!…そ、その、…、に、似合っている」
「…!」
「わーもーずるー!」
「私も恋したいなー」
「?!ど、どうなされたのだ村越殿谷沢殿」
ぎゃあぎゃあと騒がしくなる中、宮野は一人顔を赤くして笑っていた。