御堂は鼎を探していた。早めにメシ食ってる可能性はあるよなー。
例のビルには14時までに着いてないとならないからなぁ。


御堂は鼎を見つける。

「探したぞ。…やっぱり早めにメシ食ってたのか」
鼎はコンビニで買ったとおぼしきサンドイッチとコーヒーを食べていた。

「それ…足りるの?」
「緊張なのか、食欲が微妙で…。軽いものしか入らない」


鼎は食べ終えたらしく、ずらした仮面を元に戻す。サンドイッチくらいなら仮面をずらす程度で済むらしい。


「か…鼎……」
「和希、どうしたんだ?なんでそんな顔をする」

鼎はいつもと違う御堂に気づいた。あんなにも不安そうな和希、初めて見たかもしれない。


御堂は鼎を背後から抱きしめた。あまりにも心配すぎて、思わず鼎にした行動。無意識だった。

「胸騒ぎがするんだよ…。嫌な予感がする。なんというか、大きい力が動いている気がするんだよ…!」
「和希、それで私を探してたのか。…いつまで私をハグしてる?」

「べ…別にいいだろうが!こっちは不安なんだよ…。お前と話して少しは楽になったよ。
それじゃ俺は琴浦んとこ行くね。段取りあるからさ。まだ移動はしないから彩音に会ってくれば」
「…そうする」



司令室。梓は御堂を待ちかねていた。


「おせーぞ御堂。鼎と話してきたのか」
「…あ、あぁ」

「ははーん。あんた、相当不安なんだろ。鼎はお前の後輩でありながら、彼女だもんな〜。
あたしも心配だが、鼎は大丈夫だっつーの。気にしすぎ!段取り確認すんぞ、ほら」



鼎は休憩所で彩音とポツポツ話してる。

「うまく決着つけれるか…。私は過去の精算をすることになるが…」
「これ。室長からだって。もし、イーディスと戦うハメになったら鼎は戦えない身体だからって…これを渡したよ。受け取ってくれるかな…」
「ナイフ?…ただのナイフには見えないが…。鞘があるタイプだ」

「これなら身体に負担がかからないだろうって。気絶させるために持たせるとか言ってた。護身用だよ」



やがて移動時間になる。御堂が運転する組織車両内。

鼎・御堂・梓はしばらく無言。梓が切り出した。


「警察の覆面パトカーも出動したと通信入ったぞ。覆面パトカーは2台だ」
「警察も動いたか」
御堂が呟く。

「俺らの車はビル周辺で待機するからな。ビルのまん前だと怪しまれる。
おそらく警察もビル周辺で待機かもな。あの辺、ちょうどいいスペースがあるだろ」


鼎は無言のまま。



一方、イーディスはというと。


「あと30分くらいで鼎がビルに着くはず♪楽しみだわ〜」



イーディスがいる廃ビルを別のビル屋上から監視している矩人(かねと)。

「今のところ動きなしか…。あいつの元事務所は4階。動きがあればすぐにわかるはず。この位置だと」


矩人は周囲を見渡す。今現在はビル周辺に異常なし。


「矩人、イーディスは14時に紀柳院鼎と会うみたいだな。時間まで残り15分といったところかな」
當麻の通信音声が入る。
「今現在、ビル周辺異常ありませんよ」

「ゼルフェノアの車両は確実に来るから注視しておけ」
「了解」



鼎はだんだん近づく現場にかなり緊張していた。


「鼎、もうそろそろ着くぞ。あと…5分くらいかな。もうちょいしたら例のビルが見えてくる。…緊張してガチガチしてんな」

梓は鼎を気にしてる。御堂は例のビルが見えてきたと言った。


「廃ビルに見えねぇな〜。本当にここ、廃ビルか?
鼎、着いたぞ。俺達は近くで待機してるから不安になるなよ」
「警察も近くに来ているな…」



矩人はゼルフェノアの車両に気づく。


「當麻様、ゼルフェノアの車両が到着した模様」
「紀柳院がビルに入ったかは…わからないか…」

「組織車両はすぐにビルを離れたので、彼女はビルに入ったものだと思われます」
「周りを注視しろ。他に変化はないか?」


変化?


矩人は警察の覆面パトカー2台がビル周辺で待機していることにまだ気づいていない。



御堂と梓は警察と合流。ゼルフェノアでは馴染みのある、西園寺警部と会う。


「司令が紀柳院に超小型カメラを渡したのか。映像は警察のタブレットでも見れていますよ。
カメラは順調みたいだな」
「警部、どうも気になることがあるのですが」


そう言ってきたのは部下の束原。

「例のビルの近くのビルの屋上…人いません?気のせいですかね」
「人?」
「なんか挙動不審というか…気のせいかな」


束原は目がいいため、細かいことによく気づく。
この近くのビル屋上にいる人とは矩人のこと。

束原はどうも気になっていた。その人影を。



廃ビル内部。鼎は4階に着き、イーディスの元事務所へと入った。


「やっぱり来ると思ってたわ。紀柳院鼎司令補佐」
イーディスはふふっと笑う。
「イーディス…」

「ここ、懐かしいと思わない?数年前、あなたと一緒に活動していた拠点だよ」
「お前は一体何がしたいんだ…」


「知りたい?知りたいの?なんで私があなたを呼び出したのか…」


しばし無言となる2人。鼎は内心、恐怖だった。
仮面で顔が隠れていたおかげで助かったかもしれない。イーディスに怯えている顔を見られたくないから。


「鼎、また一緒に復讐稼業をしようと持ちかけたら…どうする?あの時みたいにさ」
「……断る。今の私には復讐心なんてない」

「好戦的だったあなたはどこへ消えたのかなぁ?
あの時の鼎は荒々しくて圧倒してたのに」
「私は戦えない身体になったんだ。それに…考えも変わった…。だからお前とは手を切ったんだ」


「手を切るなら何か言ってくれても良かったんじゃないの?
なんで何も言わずに来なくなったのよ。裏切ったのね、許さないから」
「それは………」



待機している車内にて。御堂と梓はハラハラしていた。


イーディスを刺激するなよー。刺激するなよー。
でも既に不穏だー。嫌な予感しかしない…。



覆面パトカー内では鼎の超小型カメラから映像を分析している。当然映像はリアルタイム。


「警部。この部屋がイーディスこと、六道の元事務所なんですよね」
「その情報は入ってるが、何か?」

「いまいちよく見えないんですが、部屋の片隅に何か置いてあります。…なんだろう…」
「束原はもう少し詳しく調べてくれ」

「了解」



矩人はようやく異常に気づく。ビル周辺にいる、あの車…覆面パトカーか?それも2台、それらしき車がある。
ゼルフェノアの車両も近くにいる。どういうことだ?


警察が嗅ぎ付けてきたのか?


矩人はヒヤヒヤしてる。警察はイーディスの捜査に出ているため、矩人が絡んでいる畝黒(うねぐろ)家は別件。

イーディスの捜査で来たのかもしれない…。我ら畝黒家はまだ明るみに出ていないはず…。



静岡県某所・畝黒コーポレーション。


役員の川辺はこの企業の元締め、畝黒當麻について調べている。
役員会議を開き、謎の地下研究所についても社内に社員に明るみにした。川辺は怪人に支配された会社を変えたいと思って動いていた。


地下研究所は怪人が作られた場所として報道されている。
これにはDr.グレアこと、常岡桂一郎もようやく認めた。



畝黒當麻の包囲網はじわじわと迫ってきているが、当の本人は涼しい顔。

人間が何したって無駄なのにね。矩人は忠実な部下だが、捨て駒に過ぎない。