こんにちわ、今少し時間あります?
え?いやだなぁ、変なキャッチじゃないですよ?
ちょっと面白い話があるんです、誰かに話したいなぁと思ってたところに貴方がいたので…
あ、聞いてくれるんですか?やったぁ!
それじゃあ話しますね。
ちょっと長いですけど、まぁ気楽に聞いてください。
これはある双子の話です。
むかしむかしあるところに…って出だし、古いですかね?
ふふ、すいません。古い本とか好きなんですよ。
話を戻しますね。
双子の名前はリエルとリリカ。
リエルはちょっとやんちゃで、妹思いの優しい兄でした。
リリカは誰とでも仲良くなれる、活発な女の子で、大のお兄ちゃん子でした。
二人はとても仲良しでした。
双子は母親と三人暮らしでした
双子の父親は神機使いで、滅多に家に帰ってこない上、帰ってきても二人は近所の家に預けられて会わせてもらえなかったんです。
その理由は後から判るんですが、その時は二人ともそうゆうものだと思ってました。
ところがある日、唐突に父親が帰ってきたんです!びっくりですよね。
父親は任務の最中に逃げてきたらしく、何かに怯えたようでした。
母親が必死に懐抱したんだけど、要領を得なくて…
後から知ったんですけど、その父親は任務の最中にオラクル細胞に異常が出たとかで、アラガミ化が始まってたみたいなんです。
でも、死にたくなくて逃げてきちゃったんです。
そんなの、一般人の母親にどうにかできるわけないじゃないですか。
それでその神機使いの父親はアラガミになっちゃったんです。
双子の目の前で母親は襲われました。
残された双子はまだ幼いわけですから状況を理解できません、可哀想ですね、彼等は自分達の母親を襲ったそれが実の父親だとは知らないんですから。
リリカは怖くて怖くてリエルにしがみついてガタガタと震えるしかできませんでした。
当然ですよね、その時双子はまだ9歳だったんですから。
でも、リエルはまっすぐ父親を見詰めたまま、近寄ったんです。
父親はまだ理性が少し残ってるのか、抵抗します。
そんな中近付いてくるリエルに気付いた母親はリリカを連れて逃げるように言いますが、リエルは一向に聞く耳持たずに立ち尽くしてます。
父親は立ち尽くしているリエルに不信感を抱いたのか、今度はリエルに向き直ったんです。
リエルを食い殺すために。
母親はこれに半狂乱になって、リエルは貴方の子だから殺さないでと叫びます。
父親、まだ理性がありますからね。怯むんです。
今まで存在すら知らなかった我が子と初めて対面したわけですから。
父親が怯むと、リエルは何を思ったか父親に噛みついたんです。
それに驚いた父親、今度は理性なんて吹っ飛んでますから、リエルを襲おうとしますけど、何故だかうまく動けない。
その隙にリエルはどんどん父親の身体を食いちぎってく。
母親は気を失い、リリカはただ変わり果てていく父と兄を見てるしかできなかった。
結論から言うとリエルはバラバラにした父親を食べたんです。
神機使いが現場に来たときは父は肉塊となってて、腕輪と神機だけが残されてました。
母親は緊急入院の末命をとりとめました。
家に帰った母親は双子にすべて話しました。
父親は若い神機使いで、それも実力的にはかなり下の方。
任務でも同行者の足を引っ張ることが多かったそうです。
あ、新人ではないですよ?でも、何年たっても新人のような動きしかできなくて同行者をイライラさせてたみたいです。
一生懸命やってるのに成果がでない。
父はそんな状態で母と結婚できないと悩んでいたそうで、母もそんな父に子供ができてしまったことは言えなかったそうです。
なので双子の存在はフェンリルに知られることなく、事なきを得るはずでした。
え?何で過去形なのかって?
そうなんです、兄のリエルがおかしくなっちゃったんですよ。
リエルはそれまで賢い子供でした。
無茶もするけど、周囲の環境に順応するすべを持ってました。
ところが、父親を食べてからというもの、リエルはアラガミを食べるようになったんです。
そして、アラガミを食べれば食べるほどどんどん知能が劣化して、獣じみてきました。
母親は双子を守ろうと懸命に働きましたが、無理がたたって亡くなりました。
その時、母親はリエルに言い残したんです。
リリカを守ってあげてね、と。
リエルはどんどん思考が幼くなっていきましたが、母親との約束だけは忘れることはありませんでした。
こうして双子は、アラガミを求め、生きるために各地を転々とすることになりました。
リリカはずっとリエルに守ってもらっていたので、その分自分ができる全てで兄を支えようと決心したんです。
そうして支え合ってきた双子のもとに、フェンリルの神機使いと名乗る人物が現れました。
正直、人間離れしてしまったリエルは人の中で暮らすのは難しくなっていて、リリカは、困り果てていた所でした。
しかしながら、フェンリルに兄の存在が知れたというのは、兄を実験動物にするつもりではないかと不安にかられました。
すると、神機使いは言ったんです。
自分も化け物だ、と。
リリカはその神機使いが兄に似ている気がして、この人なら兄を理解してくれると感じてフェンリル極東支部に行くことに決めました。
支部に着いてから判ったのですが、リエルは新型神機に適合したらしく、適合試験に合格したリエルは新型の神機使いに、リリカは旧型の神機使いとして極東支部に赴任することになったんです。
めでたしめでたし。
ふー、ご清聴ありがとうございました。
長い話なのに聞いてくださってありがとうございます。
ずっと、誰かに言いたかったんですよ。
あー、スッキリした。
それじゃあ、私はもう行きますね。
え、私の名前ですか?
ふふ、もう判ってて言ってるんでしょ?
私の名前はリリカ。
神銀リリカです。
これからよろしくお願いしますね、隊長さん。