11人目のストライカーより。
あのビジュアルで、ボイス吉野さんなの、好きしかないじゃん!って思ったら、性格もろもろ好きな子でした。比護さんよろしくおねがいします。
2022-4-21 23:30
真田
2022-4-21 23:06
[utpr]春の話02、無題
[Springreport]
■無題
「好きになった人が好きな人。俺はトキヤが好き」
常時物事に対して「好き」を息をするように口にすると男の好きははたして…などと考えなくても分かっている。これが意味するところを。
花冷え。
音也の誕生日の頃となると、この言葉がよぎる。桜の季節に付きまとう唐突な寒暖差。今日こそその言葉たらしめる日だろう。夜桜が月明かりにほの白く浮かび上がるのに、吐き出す息は白い。なにせ気温は10度。先日まで20度越えから急降下。
その中でも花は季節を告げるように健気に咲く。目の前をはらりと舞い散る桜の花びらを目で追いながら。
改めてかみ砕こう。
いや、つまり私の事を好きだということしか分からなかった。相手もそれが伝えたかったのだろうから、受け取りではお互い言わんとすることは伝わっていると思う。それがあまりにも唐突に言われたから理解に時間を要するのであって。あとは私がそれをどうとるか。
言うにしても、どうしてこう、前触れやワンクッションができないのであろうか。好きという言葉の受け取り方はそれこそ人の数だけ違う。あなたの事が好きです、で伝わるにはそれなりに過程が必要ではないか?それが、あるのだ。そうだ。この男と私の間にはそれがあって、この言葉が出るなら、ばつまり。
「今、それを言いますか」
今それをいって、もしも否めばどうするのか?それを考えているのか。プロのアイドルとしてお互いデビューも決まり、同じグループの仲間として、これからも駆け出そうという最中。思ったことを口に出す習性も、少しは落ち着いてきたと思ったら……とも思いたいが、どうにも相手は至極落ち着いて口にしているので、いかんせん本当にどうしたものか。それに。ならば今でなければよかったのか?などと一人内心笑ってもいる。
私の考える「好き」は「愛」へつながる一歩目で。祝福の言葉だった。それがはたしてこの男の世界と繋がっているかはわからない。
「嫌だって言われたらそうなんだろうなって思うし、それで気持ち悪がられたって、そこで終わらなければいいだけの事じゃん。好きになってもらうにはって努力はできるよ。でもなによりね」
音也節。拍手を送りたくなるくらいに前向きな言葉の羅列。持ち前の直感は直球で確信へ向かってきた。ここは天晴と思おう。
直感とはそもそもそれまで培った経験値でもある。己の価値観を信じ、こうありたいと思うことに素直になる柔軟さ。それを突き進むしなやかな強さ。それは誰しも持ちうるはずなのに、常識や気おくれが妨げる。まあ、直感が全て正解にたどり着くとは限らず、それにより痛手を食らうことも多かっただろうが、そこに重きを置かなければ、次へと目を向けることができる。痛手より未来への可能性。次へ、生き繋ぐ。それが一十木音也という人間の強さだ。
「今なら言ってもいいかもしれないって思ったんだ。トキヤ、ねぇ、聞いたとき真っ先に否定はしなかったでしょ?」
「そうですね」
ゆっくりと言葉を音也は紡ぐ。だからこそ、ゆっくりと噛み砕く事で、ひとつひとつ?み下す。
これが昨日今日からの付き合いならば、世辞と受け取り流すこともできるた。
残念ながら、本格的にデビューを迎えるまで、この男と過ごしてきて思い知らされた「すき」にまっすぐで、その言葉については嘘偽りを込めないのも知ってしまった。心に浮かび上がる澄んだ気持ち。
「トキヤはさ、男同士は認められはするけどさ、自分にはないだろうって、思ってるでしょ?そして同じメンバーのなかでこれからやっていく上で、仲間にそういう感情を抱くと不味いって」
足元に落ちた花びらを見ながら、よくもまあつらつらと。
「でもね」
トキヤはいつも俺のこと見てくれてる。瞳の真ん中のところに俺がいて、そこにいると俺はここにいるんだなって思える。トキヤがみてるな、って分かっちゃう。俺もれしくて見ちゃう。結局お互いさま。俺の目の色もきっとトキヤの色。トキヤが俺を好きになってくれたから、俺もトキヤが好きになれたんだよ。
「トキヤも俺のこと好きでしょう」
「ええ」
過程と結論の方程式はまったく理解できないのだが、答えだけは正解なのだ。
「ええ。私の好きは『好き』ということですよ?」
何だこの会話は。自分でも言っていることが分からなくなる。先程から我々は何度好きという言葉を発しているのか。その言葉がゲシュタルト崩壊しそうだ。つとめて言葉を選ぶ。
それを見て、そのくせ、是と言うとホッとしたように「一緒だよ。嬉しい」と笑ったのだ。
一生告げることはないと思っていた。
私の好きは、彼の多く存在する好きの一つに並んでいればそれで良かった。そう思いながら生きる覚悟も決めていたのに。そんなに私はわかりやすいのかと不安になると同時に、私が分からないことが何故か音也には伝わったことに感動した。
それは桜の咲く季節にしては、息も白く冷え込んだ日の事。
はにかんだ笑顔にどこかどこか祈りのようにも告げてきた。
「これからも一緒でいてください」
こういう時に出てくる定型句とは違う言葉にどきりとした。一緒でいてくれ。それは願いの言葉だ。そうあってほしいという、強制力のない一方的な、ささやかな願い。あなたの中の世界はどうなっているのですか?赤く燃え上がるサソリの灯のような願いなのか。
「そちらこそ」
出会いからまる三年。
数日後に迫る音也の誕生日を迎える時、私と彼は初めて付き合って迎える、いや、私が人生で初めて迎える恋人と言うべき相手の誕生日となるのだ。
・
■無題
「好きになった人が好きな人。俺はトキヤが好き」
常時物事に対して「好き」を息をするように口にすると男の好きははたして…などと考えなくても分かっている。これが意味するところを。
花冷え。
音也の誕生日の頃となると、この言葉がよぎる。桜の季節に付きまとう唐突な寒暖差。今日こそその言葉たらしめる日だろう。夜桜が月明かりにほの白く浮かび上がるのに、吐き出す息は白い。なにせ気温は10度。先日まで20度越えから急降下。
その中でも花は季節を告げるように健気に咲く。目の前をはらりと舞い散る桜の花びらを目で追いながら。
改めてかみ砕こう。
いや、つまり私の事を好きだということしか分からなかった。相手もそれが伝えたかったのだろうから、受け取りではお互い言わんとすることは伝わっていると思う。それがあまりにも唐突に言われたから理解に時間を要するのであって。あとは私がそれをどうとるか。
言うにしても、どうしてこう、前触れやワンクッションができないのであろうか。好きという言葉の受け取り方はそれこそ人の数だけ違う。あなたの事が好きです、で伝わるにはそれなりに過程が必要ではないか?それが、あるのだ。そうだ。この男と私の間にはそれがあって、この言葉が出るなら、ばつまり。
「今、それを言いますか」
今それをいって、もしも否めばどうするのか?それを考えているのか。プロのアイドルとしてお互いデビューも決まり、同じグループの仲間として、これからも駆け出そうという最中。思ったことを口に出す習性も、少しは落ち着いてきたと思ったら……とも思いたいが、どうにも相手は至極落ち着いて口にしているので、いかんせん本当にどうしたものか。それに。ならば今でなければよかったのか?などと一人内心笑ってもいる。
私の考える「好き」は「愛」へつながる一歩目で。祝福の言葉だった。それがはたしてこの男の世界と繋がっているかはわからない。
「嫌だって言われたらそうなんだろうなって思うし、それで気持ち悪がられたって、そこで終わらなければいいだけの事じゃん。好きになってもらうにはって努力はできるよ。でもなによりね」
音也節。拍手を送りたくなるくらいに前向きな言葉の羅列。持ち前の直感は直球で確信へ向かってきた。ここは天晴と思おう。
直感とはそもそもそれまで培った経験値でもある。己の価値観を信じ、こうありたいと思うことに素直になる柔軟さ。それを突き進むしなやかな強さ。それは誰しも持ちうるはずなのに、常識や気おくれが妨げる。まあ、直感が全て正解にたどり着くとは限らず、それにより痛手を食らうことも多かっただろうが、そこに重きを置かなければ、次へと目を向けることができる。痛手より未来への可能性。次へ、生き繋ぐ。それが一十木音也という人間の強さだ。
「今なら言ってもいいかもしれないって思ったんだ。トキヤ、ねぇ、聞いたとき真っ先に否定はしなかったでしょ?」
「そうですね」
ゆっくりと言葉を音也は紡ぐ。だからこそ、ゆっくりと噛み砕く事で、ひとつひとつ?み下す。
これが昨日今日からの付き合いならば、世辞と受け取り流すこともできるた。
残念ながら、本格的にデビューを迎えるまで、この男と過ごしてきて思い知らされた「すき」にまっすぐで、その言葉については嘘偽りを込めないのも知ってしまった。心に浮かび上がる澄んだ気持ち。
「トキヤはさ、男同士は認められはするけどさ、自分にはないだろうって、思ってるでしょ?そして同じメンバーのなかでこれからやっていく上で、仲間にそういう感情を抱くと不味いって」
足元に落ちた花びらを見ながら、よくもまあつらつらと。
「でもね」
トキヤはいつも俺のこと見てくれてる。瞳の真ん中のところに俺がいて、そこにいると俺はここにいるんだなって思える。トキヤがみてるな、って分かっちゃう。俺もれしくて見ちゃう。結局お互いさま。俺の目の色もきっとトキヤの色。トキヤが俺を好きになってくれたから、俺もトキヤが好きになれたんだよ。
「トキヤも俺のこと好きでしょう」
「ええ」
過程と結論の方程式はまったく理解できないのだが、答えだけは正解なのだ。
「ええ。私の好きは『好き』ということですよ?」
何だこの会話は。自分でも言っていることが分からなくなる。先程から我々は何度好きという言葉を発しているのか。その言葉がゲシュタルト崩壊しそうだ。つとめて言葉を選ぶ。
それを見て、そのくせ、是と言うとホッとしたように「一緒だよ。嬉しい」と笑ったのだ。
一生告げることはないと思っていた。
私の好きは、彼の多く存在する好きの一つに並んでいればそれで良かった。そう思いながら生きる覚悟も決めていたのに。そんなに私はわかりやすいのかと不安になると同時に、私が分からないことが何故か音也には伝わったことに感動した。
それは桜の咲く季節にしては、息も白く冷え込んだ日の事。
はにかんだ笑顔にどこかどこか祈りのようにも告げてきた。
「これからも一緒でいてください」
こういう時に出てくる定型句とは違う言葉にどきりとした。一緒でいてくれ。それは願いの言葉だ。そうあってほしいという、強制力のない一方的な、ささやかな願い。あなたの中の世界はどうなっているのですか?赤く燃え上がるサソリの灯のような願いなのか。
「そちらこそ」
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プロフィール
性 別 | 女性 |
誕生日 | 6月14日 |