遠く離れた場所で詩集を買った。

一度手に取り、
棚に戻し、
古本屋を背にして十数分後
(やっぱり)
と急いで引き返し、
気付けば財布を出していた。

引き寄せられたのだと思う。
私が本を選んだというより、
後ろから首根っこ掴まれた。




初めて訪れた本の街は、
誰かを捕まえようとする
透明な手で溢れていた。