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年末ざわざわ

なんだかんだで「器楽曲線」も今日で二年目を迎えます。
サイトを開設してから、生活環境も心持ちも随分変わってしまいましたが、このままゆるゆるひっそりと生息していけたらなぁ…と思っています。
足を運んでくださる皆様には、本当に感謝しても感謝しても足りない程です。メッセージや拍手にいつも励まされ、元気を頂きました。
本当にありがとうございます!

こんなどうしようも無いサイトですが、ぜひ生暖かい目で見守って頂けたら幸いです。








ものすごく敬愛していた京極サイト様が閉鎖されると知って、ここ最近しょんぼりしています。
私生活でも萌え要員だった職場の上司が異動する事になり、何だかもう本当に淋しい。
年末とか春とか、節目の季節は何かと変化や別れがやって来るので苦手です。うう…!

履き違える男(オリジナル)


 「好きだよ」なんて。
 そんな簡単な言葉で済ます事が出来るのなら、いくらでも言ってあげる。口では何とでも言えると、昔からぼやいていたのは君だったじゃないか。
 嘘が見抜けないの?
 嘘でもいいの?
 僕が相手の時ですら、君はそうなの?
 泣きそうなのはこっちの方なのに。君はずるい。




「僕達、付き合わなきゃ良かったね」
「酷いこと言わないで」

 ヒステリックな涙声が僕をなぶる。背中に何かが投げつけられる。眉を顰めて振り返ったら、くたくたになった犬のぬいぐるみが側に落ちているのと、顔を真っ赤にしている彼女の顔が嫌でも目に入った。
 冗談じゃない。被害者面して泣き喚けば、誰か助けてくれるとでも思っているんだろうか。

「君はさぁ」
「な、何よ」

 犬のぬいぐるみを横に押し退けて、表情を変えずにすっと前に出ると、全く同じ分だけ彼女が後じさった。
 これまで、確かに良好な関係を築いてきたはずだったその人は、今や彼氏の冷たさに怯えるただの女に成り下がってしまった。
 多分僕も、彼女の中で同じような変貌を遂げているのだろう。それが少し哀しかった。僕は、ずっと彼女の良き相談者でいたかったのに。

「君はさ、僕に嘘をつくなって言ったじゃない? 嘘つきは嫌いだって。僕は単に、それを忠実に守ってただけだよ」

“嘘を吐くな”
 付き合って最初に交わした約束だった。彼女がどんなに傷ついても、もしくは僕が傷つこうとも、二人の為になると判断すれば、僕らは思ったことを率直に言い合ってきた。
そんなことをしても、お互いを嫌いになるなんてあり得ないと思っていたから。
 壊れない絆があるのだと、信じていたから。

 まぁ、そんなものは、単なる僕の幻想だったわけだけれど。
 二人の間に落ち込む空気が言いようも無く重たい。何も変わっていないようで、すっかり変わり果ててしまった。何もかもが。
 僕の言葉に彼女は酷く疲れた顔をして、唇を強く噛みながら俯いた。涙がぽたりと床に落ちて、カーペットに小さな染みを作った。

「…馬鹿ね。男と女には、必要な嘘と、そうでない嘘があるのよ」

 私達、付き合わなきゃ良かったのね、と彼女が微かに呟いた。それはさっきの僕の台詞だ。非難めいた視線を送ると、彼女は小さく笑って、その目に溜まった涙を拭った。
 芝居めいた仕草だと思った。だけどその時の彼女の表情は、今まで見たことも無いくらいに美しい。

「僕には分からないよ」

 ああ、駄目だ。
 きっともう壊れてしまったんだ。僕はうっすらと、これで全てがお仕舞いなのだと悟った。




end.
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