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蝶(関口)※未完


京極堂の所から帰る道すがら、小さな露天で髪飾りを買った。
蝶々の形を模したそれは一目で安物と分かる品だったが、薄汚れた露台できらきらと光を反射する様が、やけに私の興味をひいた。

まるで妻のようだ、と思った。

家へ近付くにつれて、私の心はどんどん重たくなってゆく。
髪飾りを贈ったら、間違いなく妻は喜ぶだろう。
彼女の横顔に「女」を感じる瞬間、私はひどく憂鬱な心持ちになる。そして後悔するに違いない。

複雑な気分のまま、掌の蝶々を眺める。
あれで救い出したつもりか。
皮肉な話じゃないか、よりによって、この私が。









…と。
ここまで書いて、あまりに救いようが無いので途中で断念しました。色々と葛藤したり諦めたりしながら、それでも寄り添いあってる関雪が好きなんだけどな。
うまくいかないものです(*´・ω・)(・ω・`*)
1万ヒットのお礼にとフリー小説を用意しようと計画しているのですが、こちらも思うように進んでおりません;;
もうちょい生活に余裕が出来ればいいんですが。ぬぉぉジレンマ…!

星屑の記憶(アイオロス)

命が尽きるその瞬間、目に浮かんだのはやはり彼の顔だった。
救ってやれなくてごめん、と小さく呟く。本当に愛していた。
彼の強さも、心の底にあった暗闇も、全てが愛おしかった。

さようなら。さようなら。

次生まれる時は、彼だけを守る存在になりたい。





アイオロスは天を仰ぎ、今頃激しい自己嫌悪と安堵感に引き裂かれているであろうその人を想う。
霞む視界には、哀しくなるほど鮮やかな星空だけが映っていた。




* * * *




そんなロス→→←←サガが読みたい、ですorz
何というかこう、「相思相愛のくせに、お互いの関係をプラス方向に持っていけない二人」っていうシチュエーションが大好物です。
ロスサガは、一度関係が破綻してしまう所が良いよね。それだけに、後々のいちゃつき(ここ完全に捏造ですが)が堪らなくクるのよね…!

何くわぬ顔で(関京関)


中途半端な愛情は常に私を苛むのだ。
何故私を救った。何故面倒を見た。何故疎ましがる。何故そんな目で見る。何故、何故。
ああ、いっそ嫌いになれたら。

「いっそ、」
「その先を聞くつもりは無いよ」

にべもない口調に言葉を奪われる。
実際は、私の事など何とも思っちゃいないのだろう、全ては私の自意識過剰の産物だ。

「何でもお見通しなのか。なんだかなぁ」
「全く、本当に君はどうしようもない」

こんな人間ですまないね。
私は意外にふてぶてしい性格なんだな、と思うと、それがしみじみ笑えた。






end.


精一杯の関京。京関でもいいんですが。
乾いて擦り切れちゃった感じの関口センセイが好きです。
そして、榎さんについて語る関口センセイと益田の組み合わせが更に好きです(大真面目)
いろんな意味で痛々しくもひたむきな益田を、「馬鹿だなー」と思いながらも若干まぶしげに眺める中年…みたいな。みたいな。
堪らんです。

微振動(榎益)


「だらしが無いぞマスカマ! 肩に塵がついている」
 いつもと変わらない躁状態のまま、榎木津は乱暴に益田の肩についた塵を払った。普段暴君だ何だとなじられる榎木津だが、たまにふとした気まぐれを起こす時もある。
 他愛の無い行動だった。

 珍しく彼から殴られる以外の対応をされた益田はその気まぐれに動揺し、同時に小さな幸せを覚えた。
 しかし礼を言って笑った益田の顔を見た瞬間、榎木津の眉間には険しい皺が寄り、室内の空気は一変した。





* * * * * *





 毎度の事ながら、榎木津の不機嫌の波は突然やって来る。
 何の前触れもなくその八つ当たりの対象、いわばスケープゴートに仕立て上げられてしまった益田は、ろくな抵抗も出来ずに困惑するしか無かった。
 何がいけなかったのだろう。
 悶々と考えるが明確な答えは浮かんでこない。当たり前だ。そもそも“明確な答え”など無いのだから。
 益田は途方にくれて、目の前の男をただ呆然と見つめた。

「榎木津さん…あの」
「黙れカマオロカ」

 おどけた調子も無く、彼は淡々と言い放つ。何故。
 こんな時に限って和寅は外出中だった。確か本家に行くとか何とか言っていたっけ…と、益田はいい加減考える行為を放棄し始めた頭で、ぼんやりと見慣れた秘書兼給仕の顔を思い浮かべる。つくづくタイミングの悪い男だと、半ば自棄になってそう思った。

 外は雨だ。
 湿気を多分に含んだ風が窓から流れ込んできて、それが余計に益田の気を滅入らせる。
 事務所で二人きりなんて絶好のシチュエーションなのに、早くその場から逃げ出したくて堪らなかった。

「お前のそういう態度が気に入らない」
「え、えのきづさ」
「本当に気に入らない。いつも独りで悦に入って自己完結する。結局何にもならないと分かってるくせに、そうやって見ないふりばかりをする」

 ならばどうすれば良いというのだろう。眉根を極限まで寄せて、益田は思う。
 結局、何をやっても気に入らないんじゃないか。こっちの事などおかまいなしに、そうやって罵るんじゃないか。

「じゃ、どうしろって言うんですか。知りませんよ、分かるわけないでしょ僕ぁ馬鹿なんですから。何が悪いのかさえ分かってない。分からないんですよ」
「それは甘えだ」
「そんなっ……」

 言い訳のしようも無く、ただ唇を噛み締めた益田を榎木津はうんざりと見つめる。
 臆病な探偵助手は、榎木津が近付くと同じ分だけ引き下がる。きっと無意識にそうしている。
 榎木津はそのどこまでも卑屈な態度に酷く苛つき、その程度で苛つく事実に更に気分が悪くなるのだ。

「欲しいのか欲しくないのか、どっちだ」

 最早泣きそうな顔になっている益田に、彼は高圧的な問いを投げつけた。
 選べないのなら捨ててしまえ、温めているだけ無駄だと、暗に脅しをかける。他人の機敏に対して必要以上に敏感な益田が、それに気付かないはずが無いと分かっていて、敢えてそうした。

「榎木津さん…」
「……欲しいなら欲しいと、何故お前は言えないんだ」

 呆れと苛立ちが混じった榎木津の声に促されるように、益田はようやく覚悟を決める。



 震える手が、そっと榎木津の袖口に触れた。





end.




最近お邪魔させて頂いているサイト様の影響なのか、榎益萌えがじんわりとやって来ています。
愛される益田って良いですね。
いつか甘い青益にも挑戦したい…けど、需要があんまり無さそう(笑)

履き違える男(オリジナル)


 「好きだよ」なんて。
 そんな簡単な言葉で済ます事が出来るのなら、いくらでも言ってあげる。口では何とでも言えると、昔からぼやいていたのは君だったじゃないか。
 嘘が見抜けないの?
 嘘でもいいの?
 僕が相手の時ですら、君はそうなの?
 泣きそうなのはこっちの方なのに。君はずるい。




「僕達、付き合わなきゃ良かったね」
「酷いこと言わないで」

 ヒステリックな涙声が僕をなぶる。背中に何かが投げつけられる。眉を顰めて振り返ったら、くたくたになった犬のぬいぐるみが側に落ちているのと、顔を真っ赤にしている彼女の顔が嫌でも目に入った。
 冗談じゃない。被害者面して泣き喚けば、誰か助けてくれるとでも思っているんだろうか。

「君はさぁ」
「な、何よ」

 犬のぬいぐるみを横に押し退けて、表情を変えずにすっと前に出ると、全く同じ分だけ彼女が後じさった。
 これまで、確かに良好な関係を築いてきたはずだったその人は、今や彼氏の冷たさに怯えるただの女に成り下がってしまった。
 多分僕も、彼女の中で同じような変貌を遂げているのだろう。それが少し哀しかった。僕は、ずっと彼女の良き相談者でいたかったのに。

「君はさ、僕に嘘をつくなって言ったじゃない? 嘘つきは嫌いだって。僕は単に、それを忠実に守ってただけだよ」

“嘘を吐くな”
 付き合って最初に交わした約束だった。彼女がどんなに傷ついても、もしくは僕が傷つこうとも、二人の為になると判断すれば、僕らは思ったことを率直に言い合ってきた。
そんなことをしても、お互いを嫌いになるなんてあり得ないと思っていたから。
 壊れない絆があるのだと、信じていたから。

 まぁ、そんなものは、単なる僕の幻想だったわけだけれど。
 二人の間に落ち込む空気が言いようも無く重たい。何も変わっていないようで、すっかり変わり果ててしまった。何もかもが。
 僕の言葉に彼女は酷く疲れた顔をして、唇を強く噛みながら俯いた。涙がぽたりと床に落ちて、カーペットに小さな染みを作った。

「…馬鹿ね。男と女には、必要な嘘と、そうでない嘘があるのよ」

 私達、付き合わなきゃ良かったのね、と彼女が微かに呟いた。それはさっきの僕の台詞だ。非難めいた視線を送ると、彼女は小さく笑って、その目に溜まった涙を拭った。
 芝居めいた仕草だと思った。だけどその時の彼女の表情は、今まで見たことも無いくらいに美しい。

「僕には分からないよ」

 ああ、駄目だ。
 きっともう壊れてしまったんだ。僕はうっすらと、これで全てがお仕舞いなのだと悟った。




end.
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