なんかもうね、自分で自分を元気づけなきゃならない、と思いましてね。
しかもこれは優しいカナちゃんではなく、力強い紗烙様レベルじゃないとダメだと思いましてね(何)
三蔵法師には、なんか絶対的な肯定力があるイメージです。
三蔵(玄奘)も、紗烙様も、光明様も、異聞組も。…烏哭は、ちょっとわからないけど…。
と言いつつ、まだ紗烙三蔵になる前の姉さま時代の話です。
寺を襲撃してきた賊を皆殺しにした(何事)後の夢主を肯定してくれる姉さまです。
「なんだ、また泣いているのか。」
部屋の隅に座り込んで泣いていた少女は顔を上げた。
「姉さま。」
「ん?」
隣にしゃがみ、少女の頭を優しく撫でる。
「あのことならお前が気にする必要はないと、皆言ってるだろう。」
「…でも…私、あんなこと…」
少女は涙を拭って、言葉を続けた。
「何人も殺めてしまったのですよ。」
また涙をぽろぽろと溢す少女に、溜め息を溢す。
「だーかーら!」
撫でていた手を離し、少女の顔に指を突き付ける。
「何度も、それこそ私だけじゃない、三蔵様や兄さま達も言っただろう。一つ、先に仕掛けてきたのは賊の奴等。二つ、殺らなきゃ殺られてた。三つ、お前のお陰で此方は誰も死ぬことも大きな怪我をすることもなく済んだ。
ほら、何も悪いことなんてない。」
笑いかけて、また頭を撫でるも、少女の涙は止まらない。
「でも、でも私のこと、皆、本当は怖いって、嫌いだって思っているんじゃ…」
「そんな訳あるか。皆変わらずお前のことが大好きさ。」
「でも…」
「第一うちの男共がそんな器用なこと出来ると思うか?」
壁際を見やれば、少女を心配する兄さま達からの贈り物が山程積まれている。
「あの時のお前に恐怖を感じた奴がいたのは事実だ。でも、内心お前を嫌悪しておきながら、表面上はそうではないよう装える奴は此処にはいないさ。まぁ、三蔵様だったらそれ位の腹芸やれるだろうが、あの方はお前のことが可愛くて可愛くて仕方がないんだから嫌いになんてなれる訳がない。」
少女が小さく鼻をすすった。
「それに」
にやりと笑って、少女の両頬を引っ張れば、陰陽眼が円くなる。
「万が一、三蔵様や兄さま達がお前のことを嫌おうとも、私はどんなお前も大好きだよ。例え、眼を腫らして鼻の頭を赤くしてとても見られた顔じゃない上に、こんな風に頬を伸ばされてるお前でもな。」
「ねぇ、さま」
「どんなお前だって大好きだ。」
むぎゅっと挟んでから頬から手を離し、抱き締める。
胸に顔を埋めた少女はまた泣き出したが、もう声をかけることはしなかった。