今更ながら、先輩が何故「先輩」呼びなのかというお話。
名前変換出来ないから、ってだけではないのです!
いつとふにゃふにゃしてる先輩ですが、今はまだ零くんに対しても心を開いてないので、落ち着きのある大人っぽい感じを装っています。
零くんもぎこちない感じというか、先輩の扱いが丁寧な感じ。
指導担当だの零くんの階級だのは勝手に決めました。
緊張しながら、指示された部屋に入る。
そして、指示された人の前に立てば、その人は座ったまま顔を上げた。
「ん、私に何か用かな。」
「今日から配属になりました、降谷零です。」
「…あー。」
敬礼と共に名乗れば、その人は頷いた。
「あぁ、そうか。だから見覚えがあったのか。資料で見た顔だ。君が配属されてきた『ふるや』くんね。」
「はい、宜しくお願いします。」
一礼して、頭を上げればその人は困ったように笑っていた。
「女が指導担当じゃ不満だろうけど、宜しく。」
差し出された手を握りながら、首を振る。
「いえ、国を守るのに性別は関係ありません。ご指導ご鞭撻、宜しくお願いします。」
「そう言ってもらえると有難いよ。宜しくね、零くん。」
「えっ」
思わず漏れた声に、彼女は首を傾げた。
「ん、何?」
「いえ。名前を呼ばれたので、一寸吃驚して。」
「だって、降谷警部なんて呼んだら味気ないでしょう。それにうっかり外で呼んで、下手に私達の身分がバレても困る。」
「では、『降谷』と呼んでいただければ…」
「…あぁ!」
今度は、先刻とは違う可笑しそうな笑顔を浮かべた。
「ごめんごめん。名乗るのが遅れたね。私も『ふるや』なんだ。まぁ、漢字は古いに谷だから、君みたいに珍しい名字ではないのだけれど。」
言われるまで、名前をきいていなかったことに気付かなかった。緊張のせいなのか、そのことに違和感を覚えることもなく…。もしかして、この人、古谷さんの話術に飲まれていたのか?
「私のことは『先輩』とでも呼んでくれれば良いから。」
そういうと、先輩は席を立った。
「庁舎を案内するよ。あぁ、最初に君の席ね。ここ、私の隣。」
「解りました。」
「それじゃ行こうか、零くん。」
「はい、先輩。」
先輩の後ろに続いて、俺は歩き出した。