Fate×ヘタリアのクロスオーバー。
FGO始めた当初からやりたかったことを、ついにやってみました。
特異点での兄ちゃんは、国であることを放棄してしまっても良いのではなかろうか。
ジルだけじゃなくて、兄ちゃんも病んでしまっても良いのではなかろうか。
そんなところから始まった話です。
作中で明記しませんでしたが、あれです、領土が傷付くと本人も怪我をする設定です。
いつか邪ルタちゃんじゃなく、ジャンヌちゃんとの話も書きたい。
「おかえり、ジャンヌ。」
「…あら、麗しいご尊顔にまた傷がお増えになったのでは?」
「あぁ、君からの贈り物さ。」
腕を広げ、大仰に男は言ってみせた。
その様に、思わず舌打ちを一つして、顔を背けた。
その男は、フランスだった。
かつて私が救い、そして私を殺した存在。
今正に、私が滅ぼさんとしている我が祖国。
何故そのような男がここにいるのか。
私が目覚めたとき、ジルの隣でこの男は私の復活を心から喜んでいた。
剣を突き付け、そこにいる理由を問えば、男は美しい顔に微笑みを浮かべた。
「君が戻ってきてくれるんだ。君の側に祖国である俺がいるのは当たり前のことだろう?」
「私は貴方を殺すのですよ。」
「当然さ。俺が君を見捨てて死なせたんだ。他の誰でもない、俺が君を殺した。だから君には俺を殺す権利がある。」
酷く美しい笑みは、狂気以外の何物でもなかった。
それから、この男はずっと此処にいる。
変な男だ。正気を失っているのだから仕方がないことなのかもしれないが。常に私に微笑みかけてくる男が疎ましくて仕方がない。
ある時、尋ねたことがある。
「貴方、私のこと、どう思っているんですか。」
「そんなの俺の聖女さまに決まってるじゃないか。俺を救ってくれるたったひとりの女の子さ。いや、違うな、君の存在自体が既に救いか。」
「私が救いですって?何処かの誰かさんと人違いをしているのでは?」
「いや、君さ。君で間違いない。俺は救われたかったんだ、国としてじゃなく、俺個人が。恨まれたかった、憎まれたかった。それだけで、俺は救われたんだ。でもあの子はそんなこと、微塵も望まなかった。望んでくれなかった。」
悲しげな表情で遠くを見ていた男は、私を見て、幸せそうに笑った。
あぁ、なんて美しい笑みを浮かべる男なのだろうか。
「だから、俺にとって君は救いなんだ。俺を恨んで、憎んでくれる、それだけで救いだ。そして、最後には俺を殺してくれる。」
そう言って、男は私の甲に口付けを落とした。
「ジャンヌ。君は俺の聖女さまだよ。」
手を振り払って、踵を返す。
私は、これが茶番だと知っている。
この男の笑みは私に向けられているようで、そうではない。常に私を通して他の人を見ている。
結局、彼が見ているのは「お綺麗な聖女さま」なのだ。