「叔母上の恋人」シリーズ。
一先ず夢主生前の「叔母上の恋人」シリーズとしては最終話かな。夢主不在の外伝時間軸でもう1〜2話予定しております。
今回は、暗い話を装ったラッキースケベ回です(何)
なお、身体の感じは『宝石の国』っぽい感じ。精神的にはどうなんだろうか…どちらかというと男なのかな。
てか、そもそも観音様はあれは心身それぞれ性別どちらなのだろう。女寄りなのか?どっちでも美味しいけど。
今、擦れ違ったのは…。
名を呼べば、足を止めて振り返った。
「あぁ、金蝉様。」
近付けば、軽く膝を付き頭を下げられた。
「ぼんやりしておりました。気付かず失礼致しました。」
「いや、構わない…俺も一瞬人違いかと思って。」
いつもの控えめながら美しい刺繍を施した柔らかなものとは異なる硬い印象を受ける服装。髪もきつめに編まれているし、叔母上の部屋の外なのに眼帯もしていない。
そして何より雰囲気が今までとは異なり、酷く重い。
「今日から職務に復帰したので。」
そういえば、最後に会ったとき…衝撃の目撃をした日に、そんな話をされたことを思い出す。
「軍人だったのか。」
「…お判りになります?」
「文官にしては、硬い感じがする。」
答えれば、少し困ったように笑まれた。
「叔母上のところへ行くのか。」
「はい、一応復帰のご報告をと思って。」
「それなら一緒に行く。」
「宜しいのですか?」
「あぁ。」
何となく一人にしておくべきじゃない気がして。
連れ立って歩き出すが、会話はない。見上げれば、何時もより硬い表情が眼に入る。その顔を見ていて、不意に疑問が沸き起こった。こいつって…。
「なぁ、お前っておっ!?」
「金蝉様っ!」
余所見をしていたせいで、階段を踏み外した。ヤバい。
来るだろう衝撃と痛みに身を固くする。しかし予想した程の痛みは来なかった。
「大丈夫ですか、金蝉様。」
自分の下から優しい声がした。それに抱き締められている感じもする。恐る恐る眼を開いた。
「お怪我は?何処か痛むところなどありませんか?」
顔を上げれば、心配気ながらも柔らかい笑みを浮かべる顔が眼に入った。そして状況を理解する。咄嗟に俺を庇ったのだろう。
「金蝉様?」
「わ、悪い!俺は大丈夫だけど、お前こそ大丈夫か。」
「私は大丈夫です。これでも軍人ですので。」
「でもっ」
そうは言われてもと慌てて手をついて身体を起こす。…俺今何処に手をついてる……胸、元…。
「わっ悪い、わざとじゃ、ない……あれ。」
先刻より慌てて手を胸元から離した、が、その感触を思い出し、物凄い違和感を持った。
「金蝉様?」
俺を乗せたまま身体を起こしたその者は、不安そうに手を開いたり閉じたりする俺の名を呼ぶ。
「御手を痛めましたか。」
「いや、そうじゃなくて…お前って、女じゃないのか。」
不安そうだった表情が、ゆっくりとぽかんとした表情に変わる。
…ヤバい、俺変なこと、失礼なこと言った。いやでもあの感触は女のものではなかった、胸がないとかじゃなくていうなれば男の胸板だった。でも叔母の恋人なんだし…待て叔母の恋人なら男であるべきなのか?あ、でも叔母は両性具有なんだよな、じゃあ恋人は女もありってかそもそも男とか女っていう枠組みで考えて良いのか、あの叔母を。
「金蝉様。先に確認したいのですが、何処も痛めたりはなさってませんか。」
「あぁ。」
「お立ちになれます?」
「あ、悪い、重かったよな。」
急いで立ち上がり、手を差し伸べる。
「有難うございます。」
俺の手を取り、その者も立ち上がる。そしてそのまま俺の手を自分の胸元に当てた。
「ちょ、何する…」
…やっぱり、女の胸じゃない、よな。思わず疑惑の視線を向けてしまえば、苦笑を返された。
「驚かせてしまったようで、申し訳ありません。私、女というか女体ではないのです。」
「じゃあ男?」
「いいえ、中性です。」
「中性。」
「はい。身体的には上半身は男体、下半身は女体です。観世音菩薩様の逆って感じですかね。」
あっけらかんと言われ、此方がどうすれば良いか解らない。一先ず叔母と逆ってことはバランスは取れてるのか。…バランスってなんだよ。
「黙っていて申し訳ありませんでした。」
ぺこりと頭を下げられ、手を振る。
「そんな態々話して回るようなことでもないだろ。俺こそ失礼な問い方をして悪かった。それに先刻は庇ってくれて感謝する。助かった。」
そういえば、頭を上げたその者は微笑んだ。
その微笑みは、何時もの笑みで何だか安心した。
(金蝉様、何なら下も触ってみます?)
(い、いいっ!遠慮する!)
(そうですか。)
((…こいつ、此れで大丈夫なのか、セクハラとかされても気付かないんじゃ…。))