5月30日なので、フラジャンです。
絶賛ドはまり中のOLパロってか、台詞をお借りしています。
悲恋は、より悲恋で上塗りすればと思って(何)
兄ちゃんがあの子に突き放される側になるっていうのもあるりではないか、と。
薄暗い階段を降り、鉄格子の牢の前に立つ。
其の中には、膝を抱えて座り込む愛しい少女がいた。
「ジャンヌ。ジャンヌ!」
俺の呼び掛けに、彼女はゆっくりと顔を上げた。
「… フランス?どうして…。」
「君を助けに来たんだよ。」
鉄格子に手をかけ、中に話し掛ける。
「私を助けに?」
「あぁ。イギリスと取引をしたんだ。勿論、うちの奴等も納得させた。もう大丈夫だ。」
あの子の表情は依然として暗い。
「辛い目に合わせて悪かった。もう二度とこんな目には遭わせない。俺が君を守るから。」
俺が手を伸ばすも、彼女は立ち上がる気配を見せない。
「帰ってください。」
「な、何言ってんの。さぁ、俺の手を取って。」
焦る俺を見ることもせずに、あの子は首を横に振った。
「結局、幸せじゃないんですよ、私。フランスと、貴方と一緒にいても、苦しいことばっかりです。」
「ジャ、ジャンヌ…」
「ずっと、苦しいです。」
再び顔を埋めた彼女は、絞り出すように震える声で言った。
「見捨ててください。」
「ジャンヌ、何言って」
「もう私、フランスのことなんて好きじゃないです。」
少女の端的な言葉に、身を切りつけられたかのように感じた。
「忘れてください。」
「え…」
「私のことは、忘れてください。」
「何言ってんだ、ジャンヌ。そんなことできる訳ないだろ!」
思わず大きな声を出せば、小さな身体がびくりと震えた。
その様子に、自分を落ち着かせるために小さく深呼吸をした。
「君を辛い目、酷い目に遭わせてしまったことは解ってる。もう二度とそんな目には遭わせない、俺が守るって誓う。君の生涯が終わるまで、ずっと君の側にいて、君を守る。そりゃ、贅沢はさせてあげられないかもしれないけど、絶対に幸せにする、幸せにするよ。だから」
「私は」
少女の声が、俺の言葉を遮った。
「私は、フランスのことなんか、好きじゃない。」
「ジャンヌっ」
「好きじゃ、ないんです。」
漸く顔を上げた彼女は、泣いていた。
「ジャンヌ。」
「フランス。私のことは忘れてください。」
「ジャンヌ。」
泣きながら精一杯微笑む俺の聖女。
そんな彼女に、俺も涙が流れた。
「今まで、有難う御座いました。我が祖国。」
暫くしてあの子は処刑人達に連れられて、牢を後にした。鉄格子の前に座り込んで、ただ見送ることしか出来ない俺を残して。
毅然とした表情で、愛しい聖女は、俺の前から去っていった。