《キス》



僕らにとって、キスは日常茶飯事の行為。

子供の時から、君とお互いにキスをしあう。


友情のキス。

額にキスをしては、お互いに笑い合う。

おはよう。
こんにちは。
こんばんは。
さようなら。


挨拶と一緒に、額にキスをする。

友情のキスを。





いつ頃から、この関係は変わっていった?

いつ頃から、二人はお互いを意識しだしたのだろう。

いつ頃から、二人の気持ちが友情から、恋になったんだろう。


愛情のキス。

初めて触れ合った唇は、笑っちゃうほど震えていた。
あんなに沢山のキスをしてきた僕らだけど、唇にするキスは初めてだったから。


額から、唇へ。

新しい僕達に。

愛情のキスを。







「あ……。」

僕らはキスをする。

「あ…、待って…。」

『待てないよ……。』

君はそう言いながら、僕の掌にキスをする。

『お願いだ…。』

「あ……。」

繰り返し、繰り返し、君は僕の掌に口付ける。
性急に。
何度も。
懇願を口にしながら。


そして君は、僕の着ているシャツを脱がせる。
性急に。

「待っ…。」

『待てない…。』

上半身だけを脱がし、また君は掌にキスをする。

そして、その唇が掌から腕へ、腕から首筋へと上っていく。


「あぁ…っ。ン…。」


僕の首筋に吸い付いた君を見た。

余裕が無い、しかし、熱く暗い欲望を宿した目が、僕を見た。

背筋がゾクゾクとした。

快感と、恐怖と。


『好きだよ……。』


君はそう言って、僕の唇にキスをする。

入り込んできた舌を拒まずに、より深くへと絡めながら。



僕も、君が好きだよ。


でも、今日の君は、どうしてそんなに怖く見えるの――……?



唇から、首筋へ。


首筋から、胸元へ――…。





君の目に宿った感情の正体は。




まるで、狂った獣のようだ。





end





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