破れ鍋に綴じ蓋

離婚後…たった一年ほどの間に、私は数人から求婚の言葉を受けていた。
迷ったよ、正直。
私個人としては再婚なんて、とんでもない話だったし、私は恋愛感情を全く抱いていないわけだから…また、前みたいになるんじゃないかと思って。
それに…養父となった人が息子を虐待するんじゃないかと…そういう話多々あるしね。

だからまあ、そういう話をされても困った。
けど、息子に父親的な誰かは欲しいと思っていた。
私だけでは「男の子」としての教育が出来ないからね。
それに父親がいれば…小学校に入る前の再婚なら…他の人には養父とわからないからイジメにあわないかもしれないと思って。

うん、ズルいよね。わかってる。
きっと「恋愛最上級＝結婚」の人には怒られちゃうよね。
でも私は、婚姻というものを社会的な損得でしか考えられないんだ。
それにね、その当時の私にとって「私の幸せ」なんて、どうでも良かったの。
「息子が幸せになる」それだけが願いだからね。

だから、私より息子のことを第一に考えてくれない人は全員スルー
断りの返事も面倒でフェイドアウトした。
だって理解してもらえないもの。
子供第一主義じゃなかったら私にも要らないし…友達ならいいけど、そういう付き合いは…ハッキリ言うとウザイ。面倒なんだよ。
興味無いものは、いくら言われても興味無い。
異常だろうが何だろうが無理なものは無理。

世の中の人はね、恋愛感情を抱かない者を異質とみなすんだよ。
だけど、この際だからハッキリ言わせて。
子供いたら子供第一が普通じゃない？
子供を基準に考えて何が悪い？
私から見たら、子供二の次で「恋愛」に走る人の方が異常に見えるよ。
バツイチ子有りに求婚するなら、恋愛第一じゃなく子供第一が当たり前だー。
迷惑な人だよ。ホント。マジ、ウザかったよ、あの時期。

離婚後、私は息子に負い目を感じていた。
如何なる理由があろうと、息子から父親を奪ってしまったことに代わりはない。
もしかしたら父親がいないことでイジメられるかもしれない。
いや、そうに違いない。
他の地域のことは知らないが、少なくとも私の地域ではそうなのだ。
少しでも他者と違う者は徹底的に攻撃する。そういう地域性。

また、私は息子に不自由をさせたくなかった。
一応、旧家だったせいか、元配偶者自身は借金王だったが、息子自身の物持ちはかなり良かった。(玩具は大量にあった…)
なので、もし向こうに引き取られていたなら、きっと、そういう不自由はしないと思ったんだ。
だけど、私のワガママで…私は息子から、そういうのを全て奪ってしまった。
だから息子には人並みの水準までの物を揃えてやりたかったんだ。
…もっとも私だって、物があることが幸せだなんて盲信しているわけではない。
だけど自分が物の存在に救われていたから…ね。

だから今でも偶に思うんだ。
もし、私がワガママを発揮しなければ…息子は習い事も自由に出来たのではないか？
塾にも行けたのではないか？
もっと違う性格になったのではないか？
私と居ることは息子にとって幸せだったのか？
向こうの方が幸せだったのではないか？
私が息子を生き辛い性格にしてしまったのではないか？

「もしも…」を考えるとキリはない。
息子が私に、そう告げることもない。
私を責める人もまた、誰一人としていない。だけどそれは私が病んでいるから皆が気を遣っているだけで…本当は違うのではないだろうか？
息子のことは私のせいで…私は責められるべきではないのか？
そう思わずにはいられないんだ。

20代…私の行動基準はほぼ息子だったと言える｡
息子は私に生きようという気力を与えてくれた命の恩人｡
私はその恩を全力で…それこそ命を賭けてでも返したかったんだ｡

子育てに自信がなかった私は､やたら児童心理書や育児経験を語った本などを読み漁った｡
コレは私が自分で調べたものや専門家が言ったことしか信じない性格のせいでもある｡
まあ人に物を訊ねる習慣がなかったから､誰かに訊ねるということを思い付かなかっただけとも言えるけれどね…
(※私は｢人を頼るな･信じるな｣という教育を受けています)

私は、それらと独自の信念に基づいて息子を育てた。
しかし、実の父親である夫は子育てには無関心で…
そのせいなのだろうか？
気付くと息子は女言葉で喋るようになっていたんだ。
私は驚愕した。
Why？何故？実の父親が一緒に暮らしているのに？

喋り言葉や立ち振る舞いというのは、最初、人真似から始まる。だけど男の子だから、夫のが影響するものとばかり思っていたのだ。
なのに何故か、私と全く同じ…
困った。このままでは絶対良くない。他の地域では知らないが私の地域では、男の子が女の子のような立ち振る舞いや言葉で話すと、絶対イジメられる…
言葉遣いは私が改めればどうにかなるかもしれないが…立ち振る舞いは？
それは難しい…言葉は気をつけられるが男の子の振る舞い方なんて分からないよー
私は悩んだ。そしてそれは離婚後も続いた。