私にとって…
「人」は離れていくのが自然な存在。
「物」は一生傍にいるのが自然な存在。
求めたのは安定、安心、不変なるモノ。
私の外にあって尚、私に害を為さない存在…

私は欲していた。
私がどんなに懐いてもイヤなことなんかしない。私がどんなに泣いても怒らない。ただ其処に…ただ静かに…私の傍にいてくれる。そういう存在。
だからこそ物に縋った。物だけが私の外にあって尚、優しき不変なるモノ…
物は私を傷付けない。
物は私を裏切らない。
物は私を見捨てない。
物は如何なる時も其処にあり、誰かが動かしたり隠したり壊したりしない限りは、ずっと其処にいてくれる。
私がどんな人間であろうと私の傍にいてくれる。
私はどんどん「自分の物達」に執着し固執していった。
やがて私は「私の物達」をぞんざいに扱う者や奪う者を「敵」と見做し、「人」そのものを嫌うようになっていった…

そして主人に出会った。
主人は私の思いを理解してくれたのか、私には安らげる場所が必要だと部屋一つ丸々、私の領域にしてくれた。
コレでもう奪われない…
そのはずだった。
でも、そうはならなかった。
私は…正気を失った…
覚えているのは…身の一部を失ったかのような喪失感。また守れなかったという無力感と絶望感。
主人はより一層、私の身を案じるようになった。まるで腫れ物に触るみたいに…ね。