昔…私がまだ中学生の頃…
何の理由で父が怒りだしたのかは忘れてしまったけど…私はいつものように木刀で殴られ続けていた。
その頃にはもう、それの最中は叩かれ続ける自分を少し後ろから眺めているのが定番になっていたから、さほど苦痛を感じずにいられた。
(全く感じないわけではないです。痛いのは痛い…)
だから私は、いつものように堪えていれば良かった。父の怒りが治まるまでずっと。
それで良かった。それだけのはずだった。
だけど…何かが軋んだ。
…いや、産まれたのか…それとも捕まったのか…
息が詰まるような…何かが張り裂けそうな…衝動…
「殺してやる…」
私はハッキリとソレを自覚した。
ソレは今まで抱いたことのない感情。
地底の底から湧き出るような強い…強い憎しみ…憎悪…
たぶん、あれがそうなのだと思う。
私はソレを怖いと思った。私は自分が恐ろしくなった。
このままでは、私はいつか父を殺してしまう…いつか殺人者になってしまう…
私は自分自身が恐ろしくて恐ろしくて、自分は違うのだと、自分は殺人なんかしないのだと、その確証が欲しくて、実際に殺人者となった人の心理の本にのめり込んでいった。
だけど…読めば読むほど、知れば知るほど…凶悪な殺人事件を犯した人達は、私と境遇が似ていて…
私は尚も恐怖した。
私は殺人者になってしまうのかもしれない…
私は死ぬべきかもしれない。
他人様を殺めてしまう危険性があるなら…その可能性があるなら…
そう葛藤しているうちに、気付いたら知らない場所にいるということが頻発し始めて…私は益々、自分に怯える羽目になったんだ…